日米の野球に「差」はない― 青木の言葉に隠されたヒントと世界一奪還への道
条件が同じならば「違い」は縮まるのか?
野球が野球であることを変えずに、アメリカや中南米チームの「ベースボール」に対抗するためには、まず彼らと同じ条件でプレーすることが大事なのではないだろうか。つまり、WBC公式球やメジャー公式球をNPBでも公式球として採用することだ。普段から同じボールを使って同じ土俵の上に立っていれば、日本のオリジナリティある野球がベースボールに勝つ可能性は大きく増すだろう。
準決勝で侍打線を圧倒したアメリカ先発ロアークについて、青木は「あれだけ低めに投げられるアメリカのピッチャーっていないと思う。本当によかった」と絶賛した。だが、同時に「ああいうシンカー系投手は国際大会でしか経験できないのか?」と聞かれると、こんな話もした。
「結局シンカーを投げると言っても、ボールの違いが出てくる。アメリカのボールは変化しやすい。だからこそ、ああいうボール(シンカー)を投げて(打球を)前に飛ばさせて、1球でアウトを取るって考えをしてますから。日本のボールでロアークが投げても同じ変化はしないと思う」
同じ技術を持った選手でも、使う道具が変われば結果は変わる。もしかしたら、日本にもロアークのようなシンカーを投げられる投手がいるかもしれないが、ボールが違うために打者たちは、その技術に出会ったことがないように感じているだけなのかもしれない。
今回の準決勝敗退を単なる負けで終わらせないためにも、そして日本が再び世界一の座に返り咲くためにも、今回の大会で得た経験をフィードバックし、3年後の東京五輪、4年後の第5回WBCに生かすことが大切になるだろう。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato