“条件”に満たなかった健大高崎の「機動破壊」 威力奪った序盤の失点

秀岳館に2-9で完敗…プラン崩れた序盤の失点、「早い回で点とられては…」

 第89回選抜高校野球大会は29日、準々決勝が行われ、関東で唯一残っていた健大高崎(群馬)は秀岳館(熊本)に2-9で敗戦。15安打され、6回までに8点差をつけられての完敗で、甲子園を去った。ただ、1回戦では札幌第一(北海道)に11-1、2回戦は引き分け再試合の末に福井工大福井(福井)戦も10-2と打ち勝っていた。青柳博文監督は「この打線が全国の舞台で通用するということはわかった。どの投手が来ても力を発揮できるようにしたい」と夏までの課題を挙げた。

 機動破壊――。今大会も躍進の原動力となったのは、持ち前の機動力だ。盗塁や塁上での揺さぶりなど、攻撃的に仕掛ける戦法は、重盗やトリックプレーなどで力を発揮し、話題を呼んだ。この日の秀岳館戦でも盗塁は5つ。1番の安里樹羅、8番の今井佑輔が、それぞれ2盗塁を記録。前日までにビデオで相手左腕の川端健斗の牽制のクセを見抜いていた。チームで徹底し、足で崩していくことを念頭に置き、挑んだ試合だった。

 しかし、試合は敗れた。盗塁から本塁に帰ってきたのは今井の1度だけ。多くの盗塁があっても、この試合、「機動破壊」という印象は薄かった。先発投手に立てた伊藤敦紀が早々に失点。青柳監督も「早い回で点が取られてしまっては……」と悔やんだが、投手がある程度、試合を作っていかなかれば、この攻撃プランは機能しない。

 それだけではない。ある選手は「点差が離れては難しいです」と振り返った。相手も点差があることで精神的な余裕が生まれ、必要以上に盗塁を警戒することなく、目の前のアウト1つを取りにいくことに集中できる。別の選手は「打撃を徹底することができなかった」と狙い球を絞れず、ヒットでも四球でも効果的に出塁ができなかった。

 秀岳館はそれを踏まえ、初回からどんどん攻め、攻撃の手を緩めなかった。足を怖がるのではなく、“速攻”の姿勢を貫いた。大胆な作戦で得点を奪う鮮やかな足攻劇も、いくつかの条件が満たされなければ影を潜めてしまう。その結果が「機動破壊」の威力を削ぐことにつながった。

 それでも、選抜では初出場以来、3大会連続で8強以上に進出した健大高崎ナイン。引き分け再試合から連戦の日程で最後まで戦い抜いた。甲子園での4試合で自信を深め、夏に再び戻ってくることを誓っていた。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY