現役最年長の43歳ロッテ井口、忘れられない「王さんの言葉」と「2本の本塁打」
忘れられない王さんの助言「今も大事にさせていただている」
「印象深いのは2本。どちらも福岡で打った。僕の打ったボールがスタンド上空に飛んだ時のファンの空恐ろしいほどの歓声は今も忘れることはできない」
1本目は99年9月8日のライオンズ戦。勝てば首位という大事な首位攻防戦。3対3の同点で迎えた9回裏の攻撃だった。前の打者が敬遠をされ1死満塁となった場面で打席に向かった。初球をファウルした後だった。突然、ネクストバッターズサークルにいた次打者が歩み寄り、ベンチからのアドバイスを伝えてくれた。それは、王監督からの短い言葉だった。
「トスバッティングのような感覚で打て」
目の前で前の打者が敬遠をされて巡ってきた打席。知らないうちに力んでいた。その一言ですべてのイメージが湧いた。2球目を軽く振り抜くと打球は広い福岡ドームのセンターバックスクリーンに吸い込まれていった。サヨナラの満塁本塁打だった。
「周囲の人からはサヨナラ満塁ホームランの印象が残っていると思うけど、自分としては王監督からの一言が印象的な試合。力まず、トスバッティングのような気持ちで打つという感覚は今も大事にさせていただいている」
華やかな場面での派手な一発に沸いた試合。劇的な結末で球場が興奮のるつぼと化す中、指揮官が残した短い一言が井口の胸に焼きついて離れなかった。それこそがチャンスで今も井口が大事にしている心構えとなっている。