現役最年長の43歳ロッテ井口、忘れられない「王さんの言葉」と「2本の本塁打」
「1球を大切にして生きる。最年長だからと楽をすることはしたくない」
そして忘れられないもう1本は、優勝までマジック1で迎えた9月25日のファイターズ戦。4対4の同点の8回。2死走者なしから相手投手のスライダーを右翼スタンドに運んだ。「変化球でカウントを取ってくるのが分かっていたので、完全に変化球を狙っていた。スライダーに照準を絞って確実にとらえた一発」。当時の事をまるで昨日のことのように細かく、そして確実に振り返る事が出来るのが超一流選手に共通する特徴だ。この勝ち越しの1点を守り切ったホークスが初優勝。井口にとってもプロ入り初の優勝となった。博多の街が歓喜に包まれた夜だった。
マリーンズに移籍した09年も衝撃的な一発を打ち続ける。4月7日のファイターズ戦(東京D)で移籍後初本塁打。そして、マリーンズファンにとって、もっとも印象深いのは2号本塁打。4月16日のイーグルス戦(現ZOZOマリンスタジアム)。延長12回に豪快にサヨナラの満塁本塁打を放った。その後も毎年、様々な感動と衝撃を野球ファンにプレゼントし続けてくれている背番号「6」。それでも本人は「ホームランバッターではないから」と謙虚な言葉を並べる。そして、今年もまた球界最年長としてバッターボックスに立つ。
「最年長という実感は自分の中ではあまりない。グラウンドで年齢は関係ないと思っている。とにかく一日の中でしっかりと練習をして1球を大切にして生きる。どうしても、自分の姿を若い選手たちは見ているわけだから、最年長だからといって楽をするようなことはしたくない。チームの勝利に貢献するために最善を尽くす」
メモリアルアーチはもちろん、今年も様々な偉大な記録と向き合う背番号「6」。その背中をマリーンズだけではなく、全国のファンが、若い選手たちが注視している。その立ち振る舞いと生き様で伝え続けなくてはいけないメッセージがある。最年長選手として、まだまだそのバットで夢を生み出さないといけない使命がある。だから、今年も自主トレから自分を苛め抜き、限界ギリギリの極限まで追い込み、3月31日を迎える。井口の新たな伝説がまた今年も幕を開ける。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
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マリーンズ球団広報 梶原紀章●文 text by Noriaki Kajiwara