岩村明憲、引退会見で語った愛媛愛、東北愛 一問一答「今後も何苦楚魂で」

印象に残るシーン「母親が亡くなった日の試合でホームランを2本打てた」

――現役生活の中で印象に残るシーンは?

「18歳で愛媛県からヤクルト・スワローズにドラフト指名していただきまして、多くの試合を、本当に数え切れないくらいの試合を経験させていただいたので、本当に振り返るのは難しい言葉を使ったんですけど。昨日、自分たちの試合が長野県であって、帰りの新幹線の中で、1人でいろんなことを考えながら帰ってきました。多分『思い出の試合を…』っていうことを言われるだろうって想定しながらいろいろ考えていたんですけど、これを1試合に絞るのは非常に難しいなっていうのはあります。その中で数試合を挙げさせていただきたいなと。

 まず1試合目は、何よりも2001年にヤクルト・スワローズで優勝した時のあの瞬間っていうのは、やっぱり忘れられないものになりました。また、自分の母親が亡くなった日の試合に出て、ホームランを2本打てたというのも、非常に自分の中では気持ちがない中で、本当に母親が打たせてくれた部分だったと思います。あとは、WBCの世界一になった瞬間というものも非常に大きかったですし、最後にアメリカでボストン・レッドソックスとのア・リーグ・チャンピオンズシップの第7戦っていうのは非常に心に残っております。

 この中でどれが一番っていうのは正直、順番を付けがたいんですが、非常にいろんな経験を野球の試合を通して重ねさせていただいた。先のWBCでも、本当に今戦っている若い選手たちの姿を見ていると、非常に頼もしくて、日本人でよかったなっていう誇りというのも非常に感じました。共に戦って、自分がその中に入ってっていうものがないのであれば、もちろんバットは置かなければいけないのかなと」

――現役引退にあたり、一番最初に伝えた人物は?

「正直、この独立リーグに行く時に、自分の家族には『いつどうなるか分からない』ということは話してはいましたけど、正式に引退すると伝えたのは、やはり父親であったり兄であったり、ということです。ただ、本当に多くの方に支えていただいたので、まだまだ会見を開くのが早すぎて、連絡が届いていない方もいるんですけど、ただ今日明日引退するわけではないので、今シーズン最終戦を持って引退するので、1年間通して選手を語る以上、グラウンド上、フィールド上に出れば120パーセントの力が出せるように、しっかり準備をして戦っていきたいと思います」

――引退にあたって、印象深い言葉を掛けられたか?

「いろいろな方々から声を掛けていただいたんですけど、僕を福島に引っ張ってくれた小野剛GMがですね、一番最初に引退すると言った時に、自分のことのように涙を流してくれました。僕自身はもちろん、寂しい辛いこともあるかもしれませんが、なんかここでけじめというか、一線を引けることに対して、なんか清々しい部分もあるんで、そうやって親身になって考えてくれたことに感謝しています」

――楽天在籍中に震災を経験して東北地方との関わりも根強くなった。今後の東北復興への関わりについて。

「福島県の郡山と(東京の)自宅を行き来している中で、今年で3年目になるこの東北生活、プラス仙台に住んだ2年間の生活の中で現状を見た時に、まだまだ復興が進んでいない部分はありますし、風評被害ももちろんあります。もちろん、政治の方々が考えられるべき部分で、僕たちが首を突っ込むのはどうかと思うんですけど、僕たち一人一人ができることを、これからもやっていきたいし、野球選手がそういうものに携われる、一役買えるものであれば、逆にどんどん教えていただきたいなと。

 福島県は、特に原発という非常に大きな問題を抱えています。(福島に)いてニュースで目にするのは、避難されている方々、また子供たちに対してのいじめの問題っていうのは非常にシビアな問題であって、それが現実に起きている問題だと思います。それを、やっぱり周りの大人がどうに考えるかは非常に大事な問題ですし、これは野球人というより、一人の大人として勉強させられるなと。対応の仕方もそうだと思いますし。そういうところで一役買えるのであれば、何でも強力させていただきたいと思います。

 ただ、現在福島県内で生活されている方は非常に元気に生活されていますし、自分も交歓試合として子供たちの試合をやっているんですけど、非常に明るく笑顔で白球を追う姿っていうのは、東北のみならず全国変わらないなっていうのを、僕は感じています。今回、2020年の東京オリンピックの野球・ソフトボールの試合が、福島県の東球場でも行われるというのが決定して、福島県はそれに対していろいろな課題をクリアしていかなければならないと思うんですけど、世界が注目してくれること、世界の方々が福島県に足を運んでいただいて、今の福島の良さを口コミで広げてくれること、それをどう考えていかなければならないかが、僕は非常に大事だと思っていますので、野球を通して僕たちが伝えていけることは、これからも伝えていきたいと思います」

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