岩村明憲の“意識”を変えた斎藤雅樹氏との対決「ただうれしいだけではダメ」

「八重樫さんに軽く頭を叩かれたのを覚えています(笑)」

「あの時のシーンは自分でもよく覚えている」と振り返るのは、1999年9月24日、巨人戦での4回の攻撃だった。

「ネクスト(バッターサークル)にいる時に(打撃コーチだった)八重樫(幸男)さんに呼ばれて『高めの球だけ待ちなさい』って言われたのに、打ったのはスライダーで低めだったという。まったく言うことも聞かずにホームラン打って、ベンチ戻ってきた時、八重樫さんに軽く頭を叩かれたのを覚えています(笑)。八重樫さんの愛情表現ではあるんですよ」

 斎藤と言えば、巨人のエースとして一時代を築いた大投手。1999年は故障に悩まされた年になったが、それでも当時20歳だった岩村は「東京ドームで斎藤雅樹さんから満塁ホームランを打てたことが、非常に自分の中で『まさか』という部分ではあった」と振り返る。

 もちろん、たまらなくうれしい打席だったが、同時に身が引き締まる思いも覚えたという。

「あの斎藤雅樹さんと対戦するのも、勝負できてホームランを打てたことも、非常にうれしかった。(同時に)『ただうれしいだけではダメだな。これからもこういう素晴らしいピッチャーと対戦していくわけだから』っていうことを覚えた。あのホームランが(自分の意識を)そういうものに変えた部分だと思います」

 NPB、メジャー、独立リーグと、さまざまな舞台で慢心することなく前進し続けた岩村。満塁弾を打たれた斎藤にとって、あの打席が岩村の意識を変え、21年に及ぶプロ生活に影響を与えていたとは、想像すらしなかったことかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

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