阪神に苦い過去? いざという時の助けになる「隠れ捕手」

過去に苦い経験も…

 5月10日の試合もそうだが、試合がもつれた展開になったときに、捕手に代打を送るケースがままある。また試合中にファウルチップが当たるなどして捕手が退場することもある。ベンチ入り捕手は2~3人だ。展開によっては捕手がいなくなって窮地に陥る可能性もあるのだ。そういう時に捕手経験のある野手がいれば重宝する、という考えもあるようだ。

 実は阪神は、昭和の時代、苦い経験をしている。1977年4月30日、川崎球場の大洋戦で、正捕手田淵幸一がファウルチップで負傷退場、控え捕手の片岡新之介に交代したがこれまたファウルチップで負傷、もう一人の控え捕手大島忠一はすでに代打で使っていたため、8回の時点で捕手がいなくなった。

 阪神ベンチは茫然としたが、捕手の経験が全くない外野手の池辺巌が申し出てマスクをかぶることになった。池辺は投手の古沢憲司と組んで、2イニングを無難に抑えたが、捕球のたびに顔をそらす池辺の苦しそうなシーンは「プロ野球ニュース」などで何度も流された。

 阪神は、こういうこともあって“保険”の意味で「隠れ捕手」を用意しているのではないか。今年は9点差の試合をひっくり返すなど、異様な粘りを見せる阪神。もつれた展開で「隠れ捕手」がマスクをかぶる機会が出てくるかもしれない。

【了】

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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