変貌遂げる阪神打線 ルーキー糸原も存在感、静かに進行する“変革”とは
ルーキー糸原も存在感発揮…柳田、山田らと同レベルの数字
最後に、個別の選手の数字を見ることで、誰が阪神に変化をもたらしているのかを捉えてみる。
阪神の主力打者はそのほとんどが、昨季よりもスイングを控えている。上本博紀、福留孝介、鳥谷敬は特にボールゾーンを「振らない」打者だが、その傾向をキープ。福留、鳥谷はストライクゾーンに対してもスイングする割合を下げている。今季より加わった糸井嘉男もボールの見極めはうまく、低い数字をキープしている。
ストライクゾーンを振るケースの平均は65%付近、ボールゾーンを振るケースは30%付近だが、昨季これを上回っていた中谷将大や高山俊、原口文仁らが数字をやや下げた。概ね平均レベルだった梅野隆太郎はストライクを振る割合を大きく下げ、「振らない」打者の仲間入りを果たしたようだ。
そして、極めつけはルーキーの糸原健斗だろう。ストライクの半分以上を見送り、ボール球をスイングする割合も例年の平均より10ポイント近く低い。その結果、打席数は少ないながらもBB%は17.7%(5月25日時点)と高い値を残しており、これは柳田悠岐(ソフトバンク)や嶋基宏(楽天)、山田哲人(ヤクルト)ら選球眼を生かし頻繁に四球を奪う選手たちと同じレベルの数字だ。糸原が打線に名を連ねていることも、阪神打線の四球を奪う力を高めている。
打席でボールを見極め、自らのストライクゾーンを管理する能力は、トレーニングなどを通じて得ることが難しい能力であるとも考えられている。少々地味に映る“変革”かもしれないが、チームの得点力をじわじわと高める、貴重な武器を阪神は手にしつつある。
DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1?5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(http://1point02.jp/)も運営する。
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