「強かったな、ほんまに」最後の夏を終えた履正社・安田が漏らした本音

ライバル校に見るスタイルの違い、寮生活の大阪桐蔭、自宅通学の履正社

 先発した両エースの粘りも紙一重の差だった。立ち上がりは、履正社の竹田祐の方がやや良かったかに見えたが、大阪桐蔭の徳山は、走者を出しても強気でぶつかっていく姿勢を忘れていなかった。特に、敵の強打者、安田に対しては特大ファウルを打たれても「気持ちで負けたら終わり」と自分に言い聞かせ、勝負し続けた。

 5回戦と準々決勝で計25得点を挙げるなど、絶好調の履正社打線に対し、捕手を務める主将の福井章吾は、準々決勝の試合後こんなことを言っていた。

「自信を持ってリードすればいいと思っても、履正社の打線は怖いですよ。特に安田君は調子がいいし、どこに投げても打たれる雰囲気があります。でも、自分たちも気持ちで負けてはいけない。それだけはずっと思い続けないといけないと思います」

 この日は安田に対して5回に痛烈な左前打を許したものの、初回は空振り三振、7回にはセンターへの特大フライに仕留めた。気持ちで負けずに、4打数1安打に抑え込んだことは大きな勝因の1つだろう。

 スコアは8-4。選抜の決勝戦は8-3だったため、スコアにはさほど変わりはないが、選抜の時、履正社打線は5回まで無安打に抑えられ、3点という点差以上に力の差を感じた。その半年後の大阪大会準決勝では、終盤まで五分五分の展開に持ち込んだことに、“成長”が窺いしれる。だが、善戦しても敗戦したことは事実。「それでも負けてしまったので…」と、若林主将はうつむいた。

 ライバル校として比較されてきた中で、常に指摘され続けてきたのが練習環境の違いだ。大阪桐蔭は寮生活、履正社は自宅通学という対照的なスタイル。大阪桐蔭ナインは野球とだけ向き合うストイックな生活の中、「自分たちはこれだけ練習してきたんだ」という自負が生まれるという。自宅通学の履正社は寮生活よりも制約が少なく、大阪桐蔭の選手には「自由にできるチームには負けたくない」という意地が生まれるようで、直接対決では一層モチベーションを上げて決戦に挑む。今年も履正社を「一番負けられない相手」とし、気合を込め、闘志をみなぎらせた。この姿勢は、いつからか大阪桐蔭野球部内で脈々と受け継がれるようになった。

「この悔しさは後輩たちに晴らしてもらいたいです」

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