「本当なら2軍落ち」―日ハム上原、プロ初勝利で次々とあふれた感謝の言葉
苦しんだ1年目「野球に関しては一つもいいことはなかった」
身長190センチの大型左腕としてドラフト1位で入団したが、昨季1軍登板はシーズン終盤の1試合1イニングだけ。18試合に登板したイースタン・リーグでも防御率5.63と苦しい1年だった。
「野球に関しては一つもいいことはなかった。ちょっと良くなれば通用しないという繰り返し。でも、1年半やってきて、やっと形になりつつあるという実感があります。これをきっかけに変わっていけたら」
1軍での経験が成長を加速させている。転機になったのは、今季初登板した7月3日の西武戦だ。9回にマウンドに上がり、1イニングで5安打5失点。滅多打ちされたことで、自分自身が考える良いボールと打者が打ちにくいボールとの違いに気がついた。「自己満足よりも最低限のところでミスしないことが大事。悪いボールでもタイミングを外して打ち取ればいいと考えると楽になりました」と発想の転換が生まれた。
この日はもう一つ負けらない理由があった。母校の広陵が甲子園で準々決勝を戦っていたからだ。「直前まで見ていて“ヤバっ”と思いました」と試合開始30分前までテレビに釘付けになった。初回3点を先制した後輩たちを見て「プレッシャーがかかりました」と自分にも気合を入れてマウンドに向かった。
4万人が見守るお立ち台で上原は照れくさそうに笑った。「ホッとしています。長い間待ってもらったので。やっとここからスタートに立てたなと思います。これからもチャンスをいただけたら精一杯チームのために頑張ります」。期待の大型左腕の初勝利を見届けた本拠地は大歓声に包まれた。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)