「いつかトップでコーチを」―引退後に楽天に“復帰”した「天才打者」の思い

ノムさんが称えた「努力の天才」

 現在は、スクールがある日はお昼ごろに出社し、22時くらいまで指導を行うという生活を続けている。「ナイターの生活に似ていると思います」と鉄平さんは言う。Koboパーク宮城で試合がある日は、地元テレビ局で楽天戦の解説を務めることもある。また、現役時代から趣味であったギターの腕を生かし、ラジオのパーソナリティーが本業の2人とともに「鉄柳 with TACK」というバンドも結成。ライブを行うこともあるという。

「スクールは週3、4日くらい。スクールだけじゃなくて、土日は野球教室があって、そういう時は午前中から動いたりしますけど。野球教室をやってから解説という日もあります。(指導の対象は)子供たちがメインで、野球を教えることに加えて、(伝えるのは)野球の楽しさというか、一緒にやって楽しむという感じでもあります」

 高い打撃センス、抜群のバットコントロールを誇り、天才型の選手と見られることが多かった鉄平さん。ただ、本当は誰よりもバットを振ってきた“努力の人”だ。現役時代には、休日でも必ず球場に姿を現し、黙々とバットを振った。かつて楽天を指揮した名将・野村克也氏も、その姿を見て「本当に打撃が好きなんだな。鉄平は努力の天才や」と感心するほどで、その努力は2009年には打率.327での首位打者獲得という形で実った。2010年も打率.318をマークするなど、まさに楽天の球団史に名を刻む好打者だった。

 ただ、そんな鉄平さんでも、指導となると勝手が違うという。

「難しさを感じる時のほうが多いですね。AとBという子にバッティングについて同じことを言っても、Aに通じてもBには通じないとか、それはよくあります。感覚で言っても絶対に伝わらないというのは分かるんですけど、噛み砕いて言っても逆に回りくどくなって全然伝わらないとか。どう伝えたら分かるのかなと考えるのは難しいですね。ただ、その中でも上手く通じて、言葉を運ぶと、出来るようになったりして、子供も上手くいったと分かるので。その時はいい顔をしてくれますし、そういう時はやっぱり嬉しいです

 子供たちはやっぱりどんどん変わっていくので。前にこの教え方をしたら子供たちの反応がすごく良かったからといって、別の会場で同じことを言っても全く駄目ということもあるので、そうなってくると言い方とかそういうのをその時々で変えていかないと、というのはあります。2年目になりますけど、なかなかスキルアップしたなというのを実感できることはまだないですね。そういうふうに気づけるようになったというだけでも経験値がアップしたのかなとは思いますけど。

 ただ、自分でも現役時代にある程度、勉強してきてたものがある中で、(スクールの指導に)入る時は小学生と対峙することによって、新発見があるかなという気持ちが多少ありましたけど、今のところはまだないですね。野球の技術的なこととか、目新しい技術の新発見、体の使い方とか、そういったものの発見というのは今のところないです。だから、より噛み砕いて教えるというところで、難しいんですけどね」

“打撃理論”について語る鉄平さんは、やはり生き生きとした表情になる。野球への愛情は、ユニフォームを脱いだ今でも深い。そして、現在の経験が将来につながるだろうという思いもある。鉄平さんは、「出来ればトップチームでコーチをやりたいなという気持ちはあります」とはっきりと口にする。

今年からはトレード相手と同じ職場に

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