投手と野手の垣根を越え――和田毅が抱く、井口資仁への思い

「井口さんの振る舞い、姿にはすごく勉強させてもらいました」

 今でも鮮明に覚えているのは、2003年10月27日の日本シリーズ第7戦。日本一をかけて阪神と対戦し、3勝3敗で迎えたこの試合。先発マウンドに上がったのが和田だった。初回2点を奪ったダイエーは、3回に井口が2ランを放ち、リードを広げた。これ和田が守り抜き、9回2失点で完投勝利。胴上げ投手となった。その年のシーズンでも109打点を挙げた井口。今も変わらぬここ一番での勝負強さは、若かりし和田にとっても鮮烈だった。
 
 1997年に青山学院大からダイエーに入団した井口と、2003年に早稲田大から入団した和田。同じ大卒出身者ということもあり、投手と野手の垣根を越え、左腕にとって井口はプロとしての振る舞い、姿勢をも見習うべき存在だった。 

「同じ大卒というのもありますし、井口さんにはすごく声をかけてもらいましたし、井口さんの振る舞い、姿にはすごく勉強させてもらいました。井口さんは背中で語る方だったので、全ての面において真似じゃないですけど、プロはこういう風にするんだというのを勉強させてもらいました。今ほど全部教えてくれるわけではないので、見て盗むというか。そこから色々話すようになって、よくしていただきました。食事にも何回も行きましたし、公私ともに可愛がってもらいました」
 
 ともにメジャー挑戦もした同志でもある井口と和田。井口の日本球界復帰後はロッテとソフトバンクという敵となり、相まみえることとなったが、2人の間に出来た絆は変わらない。井口が和田から現役最後の安打となるかもしれない左前安打を放ち、和田は通算1500奪三振という節目の三振を井口から奪った。不思議な縁によって、感動の物語が刻まれた一戦。そこには、和田の井口への思いも込められていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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