松井秀喜氏が語るジャッジの凄さ 特別インタビュー(中)「素質は抜けていた」

ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏【写真:大橋小太郎】
ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏【写真:大橋小太郎】

「サンチェスにしてもジャッジにしても、持っている素材、素質は抜けていた」

 昨季マイナー410打席で19本塁打だったジャッジは、今季メジャーで同じ410打席を消化した時点で32本塁打。サンチェスは昨季マイナー313打席で10本塁打、メジャー229打席で20本塁打だった。ともにマイナーで圧倒的な数字を残すことなく、メジャーでそれ以上の成績を挙げた。

「サンチェスにしてもジャッジにしても、この成績の伸び方はちょっと説明できない。今までにあまり見なかった例。ただ持っている素材、素質は抜けていた。ジャッジがうまくいけばこのくらいというところまでいったのなら、サンチェスは期待よりももっと上にいった感じ。メジャーであれだけ打てる感じはなかった。予想以上だった。ヤンキースタジアムは打者有利の球場だから、その辺で意識に変化はあったかもしれない。トレントンとスクラントンはすごく広く、投手有利と言われている。

 ジャッジに関して明らかに変化があるのは選球眼が良くなったこと。フォアボールがメジャーに行って増えた。三振も多いけど、四球を選んでいる。一番いい変化が出た。四球を選んでいるというのは、ボールを見極めているということ。ボールを見極められるのは、ボールを長く見ているから。ボールを長く見る感覚というものに気付き、自分のものにしたのではないかと思う」

 ジャッジは身長201センチ、体重127キロ。サンチェスは188センチ、104キロ。自分より大きく力も強い選手を指導することは、臨時コーチを務めた巨人の宮崎キャンプなど日本での指導ではまずないことだった。

「大きい選手に教える方が教えやすい。力があるわけだから、教えるときにこれができれば必ずある程度のところまでいけるという確信が持てる。タイプ的に似ていて肉体的に力を持っている選手に教えるのは自分の経験を生かしやすい。本人たちがどう受け取って料理しているかは分からないが『これが一番いいと思うよ』ということは伝える。今の立場だと、直接伝えるよりも打撃コーチと情報を共有してコーチから伝えてもらった方がいいこともある。コーチは選手を毎日見ているので、特に細かいことを伝えるのはいつも側にいるコーチの方が良いと思う。

 長距離打者はある程度長打が出やすいゾーンの球を狙う。基本的には甘い球をどう打つか。僕の場合最初から難しい球を意識することはほとんどなかった。簡単に言うと、長打を意識した上で確率を上げていこうとするタイプ。どちらかというと最初に長打ありきだった。その辺はぶれなかった。その時々の調子もあるし、行ったり来たりはするものだが、僕の場合その意識だけは変わったことがなかった」

(特別インタビュー第3回では、松井氏が後輩の巨人高木京、そして自身の今後について語る)

◇プレゼントについて 松井秀喜氏の著書「エキストラ・イニングス 僕の野球論」(本人の直筆サイン入り)プレゼントはご応募を締め切りました。多数ご応募いただきありがとうございました。当選者の発表は、発送をもってかえさせていただきます。

(神田洋 / Hiroshi Kanda)

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