悩み、苦しみ、12年目― 「浪速の轟砲」T-岡田が描く本塁打という芸術
来季はマレーロ、ロメロ、吉田正らを擁する強力打線に期待
ところが、以降は故障にも悩まされて成績が伸び悩み、昨季まで本塁打数は30本の大台に届かず。和製大砲としては物足りない数字に終わってしまっていた。しかし、リーグ最下位に沈んだ昨季の悔しさを胸に、選手会長として並々ならぬ決意で迎えた2017年、楽天との開幕戦では1点を追う7回裏に打った瞬間それと分かる特大の同点弾を右翼上段へ叩き込み、オリックスに「浪速の轟砲・T-岡田」ありと、その復活を声高に知らしめた。
3・4月度の「日本生命月間MVP」に選出されるなど順調なスタートを切り、T-岡田にとって、2010年以降苦しんだ6年間とは一味違うシーズンとなっている今季。ここまでの成績は141試合496打数134安打31本塁打68打点、打率.270と、試合数、安打数など、多くの部門でキャリアハイをマークしている。
また、開幕直後の打撃フォームはいわゆる「天秤打法」に近いもので、本塁打王に輝いた年の「ノーステップ打法」とは異なっていた。その打法で順調に本塁打数を積み重ねながら、そこで満足することはなく、絶えず新打法を模索。結果が出ていても満足せず、悩み苦しみ試行錯誤を繰り返す姿勢こそ、彼が彼たる所以でもある。
8月にはプロ入り初となる1番・2番打者を務め、プロ入り以来全打順を経験。18日の試合では2番打者として23号ソロを放つなど、和製大砲でありながら「どの打順を任されても打てる」チームへの献身的な姿勢と器用さも見せた。
残念ながらチームはクライマックスシリーズ進出を逃したものの、T-岡田はもちろん、マレーロ、ロメロ、吉田正などの大砲を擁する打線は、ひとたび火が着けば誰にも止められない爆発力を秘める。来季、この破壊力抜群の打線がどれほどの猛打を振るうのか楽しみでならないのは、おそらくオリックスファンだけではないだろう。
9月29日の千葉ロッテ戦で、プロ野球公式戦通算9万9999号となる今季30本目のアーチを描き、7年ぶりに大台にも到達したT-岡田。現在、本塁打は31本。残り試合はわずか2試合となったが、まだまだキャリアハイとなる33本超えを目指せる位置にいる。1本でも多く、T-岡田にしか描けないあの美しい放物線が見たい。