チームの低迷に苦しんだ2017年 ロッテ鈴木はこの悔しさも惜別も糧にする

最終戦後にはチーム、ファン、指揮官への感謝の気持ちをインスタで綴った鈴木

 そして、長年務めた遊撃手から二塁手へコンバートして迎えた今季。チームは開幕4連敗を喫したが、4月5日の北海道日本ハム戦で逆転2ランを放ち、そのバットで待望の今季初勝利をもたらす。その後も、深刻な打撃不振に陥り、なかなか上昇気流に乗れないチームの中、打率2割台後半をキープして4番に座るなど気を吐いた。

 また、7月15日にZOZOマリンスタジアムで行われた「マイナビオールスターゲーム 2017」第2戦では「だいちー!」と叫ぶファンの大歓声に迎えられて登場すると、2安打1本塁打1打点の活躍で敢闘賞を獲得。さらに試合終了後には、パ・リーグ選抜の選手全員で「WE ARE」を行い、千葉ロッテファンのみならず全パ・リーグファンを大いに沸かせた。

 9月24日に行われた北海道日本ハム戦ではサヨナラ打を放ち、アマチュア時代から憧れの存在だったという井口の引退試合に花を添える。その後、チームは徐々に復調の兆しを見せつつもシーズンを最下位で終了。最終戦も白星で飾ることはできなかったが、井口自身による9回裏の同点弾も含めて、24日の試合は苦しいシーズンをともに戦ったナインとファンの思いを乗せ、大いなる感動をもたらす一戦となった。

 野球はチームスポーツだ。スター選手が1人いるだけでは勝てないことの方が多い。自分の奮闘がチームの勝利に結び付かない選手も、力を出し切れない選手も、それぞれのもどかしさを抱えて戦っている。そしてその焦りと責任感が悪循環を生み、今までできていたことさえできなくなり、狂った歯車は戻らないまま選手の心身を削っていく。今季、キャプテンとして多くの責任を負った鈴木にとっても、振り返れば野球の恐ろしさばかりが思い出されるシーズンだったかもしれない。

 しかし、鈴木がサヨナラ打で完璧に幕を引いた井口の引退試合は、恐ろしさと表裏一体である野球の素晴らしさ、グラウンドで繰り広げられるドラマの尊さを、多くの感性に訴えた。そんな1試合を生み出すことは、どこのチームにでもできることではない。

 シーズン最終戦後に更新された鈴木のインスタグラムには、チームとファンと指揮官に対する感謝の気持ちが、言葉を尽くして綴られていた。来季への意気込みも明るい口調で語られていたが、その前向きな心境に至るまでには、長く苦しい葛藤があったことだろう。伊東監督が退団し、千葉ロッテは来季から新体制に生まれ変わる。全てが速やかに良い方向に向かうわけではないかもしれない。それでもいつか鈴木には、苦しんだ今シーズンのことも、この歓喜のために無駄な時間ではなかったと言ってほしい。

【動画】井口の引退試合でキャプテン鈴木が決めた! 劇的なサヨナラ安打

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