パCSファイナル第1戦の勝敗を分けた、楽天とソフトBの「駆け引き」

8回も高梨をマウンドへ送ったのは「向こうとの駆け引き」

　そして、7回からの継投と、ソフトバンクによる代打攻勢に、駆け引きとせめぎ合いがあった。7回からはハーマンを投入。内川に右前安打、松田に四球を与えて1死一、二塁となり、打順は川島へ。ここでソフトバンクベンチは、代打・長谷川勇を送った。すると、楽天ベンチは迷わず左キラーの高梨を送った。結果的には二ゴロ併殺打と最高の結果となった。

　さらに8回。右の甲斐、左の上林、明石と並ぶ打順で、梨田監督はまず高梨をそのままマウンドに送った。左腕が投球練習を終えるタイミングで、ソフトバンクサイドは先頭の甲斐の打順で代打・吉村を送った。これを見るやいなや、与田剛投手コーチがすぐさま、マウンドへ。指揮官はセットアッパーの福山への交代を告げた。

　この場面、回の頭から高梨ではなく、福山がマウンドに上がっていたとしたら、甲斐への代打は高田、本多、福田といった左打者になったのではないだろか。指揮官は「向こうとの駆け引き。（吉村が）出てくるのは分かっていた。代打の代打なら、戦力を1人削れるからね」とした。左の高梨をマウンドに送ったことで、右打者の吉村を引っ張り出した。代打の代打で左打者を送られたとしても、右の代打の切り札の吉村を交代させることが出来るならばOKと踏んだのだった。

　思惑通りにリリーフ陣が反撃を凌いだ。9回に守護神・松井裕が内川のソロを浴びて1点差に迫られたものの、何とかリードを守り抜き、初戦を勝利で飾った。6試合制の短期決戦のクライマックスシリーズ。グラウンド上、そして両ベンチで繰り広げられている駆け引きも面白い。

（福谷佑介 / Yusuke Fukutani）