ダイエー、MLB、ロッテ…名打者・井口資仁に“広い視野”を授けた野球人生

米球界を経て、四球を選ぶ選手に変貌

 ダイエー時代のK/BB(三振数を四球数で割った数値)は0.42、中心打者として三振を恐れず積極的に打って出る打者で、四球は少なかった。しかし、ロッテでのK/BBは0.69と相変わらず三振は多かったが、四球も選ぶ、貢献度の高い選手に変貌していた。

 これはMLB時代に中心打者ではなく、2番や下位を打つことが多く、つなぐ野球、塁に出る野球を覚えたことが大きいと思われる。野球を見る目が深まったのだろう。

 ロッテでの井口は「4番・二塁」で打線の核となるとともに、若手選手を引っ張るリーダーとなり、多くの選手に手本を示した。特に、2010年にKBO(韓国プロ野球)から鳴り物入りで入団した金泰均(キム・テギュン)には大きな影響を与えた。投手の配球の違いから打撃不振に苦しんでいた金に、井口はじっくりと球を見極めることを教えた。この年のロッテは3番井口、4番金の打線で“下剋上”を果たし、日本一に輝いている。

○井口資仁の日本球界での成績
【ダイエー】
894試合 3175打数860安打149本塁打507打点159盗塁321四球 打率.271
【ロッテ】
1020試合 3332打数898安打101本塁打508打点17盗塁457四球 打率.270

 本塁打は減り、盗塁もほとんどなくなったが、打点はほとんど変わらず、四球は増えた。バットをブンブン振り回す威勢のいい若武者は、MLBでの武者修行を経て円熟味ある古武士の風格を持つ名選手へと変貌したのだ。

 ダイエー、MLB、ロッテと3つの「野球人生」を生きて、井口は広い「野球の視野」を得た。選手から即監督就任、というルートには危惧を示す人もいるが、多くの引き出しからいろいろな知恵を取り出して、チームを立て直すのではないか。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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