指導者2年目、オリ田口壮氏の今・前編「彼らは僕のことを監督と思っていない」
2軍での指導は「なるべくシンプルにと思っています」
――現役時代には走攻守で活躍した田口監督ですが、どの分野での指導が多いのでしょうか。
「どれぐらいタッチしているかな。ちょっとですよ。基本的には全部、担当コーチに任せるようにしています。その中で一応、打撃コーチの肩書がついているので、バッティングだけはまあまあ言いますけど。ただ、僕も打率3割を打っていたバッターではありません。それを考えると、3割を打たなくてもこの世界で20年ぐらいは生きられる術というのは色々あるので」
――技術面に加えて、自身の経験も伝える機会があるのではないですか。
「経験を伝えるということはなかなか……。聞かれないと言えないですよね。あまり自分から『俺こうだったから』というのは嫌じゃないですか。昔の話を引っ張り出してくるみたいで。時代が違うし、僕がやっていたのは過去の話だし。聞かれたら『こんなことがあったよ』という話はできますけどね」
――様々な課題を挙げていた就任1年目の昨季を踏まえて、今季はどのようなことを意識して臨まれましたか。
「基本的にいろんなことをやりたいし、やってもらいたい。ただ、すべてを詰めようとすると、迷ってできなくなるというのが2軍の選手の現状。そうならないように、なるべくシンプルにと思っています。ピッチャーにしてもそうだし、野手にしてもすべてシンプルに。常に言っているのは『ピッチャーはストライクを投げて勝負してください』、『バッターは形をしっかり作って思いっきり打ってください』という単純なことですね。それにちょっと枝葉がついてくるぐらいで、基本的なことばかりやっています」
――監督2年目は試合中に感情を表に出さないようにしたいとも語っていました。
「そうですね。今、ようやく出さなくてよくなりつつあるかなと思っています。去年はベンチが静かだったり、ピッチャーも意図が見えなかったりしたので、結構怒鳴っていたし、自分から声も出していました。今年に入ってからは、僕が何も言わなくてもベンチで声が出るようになってきたので、そういうところは変わりつつあります」
――監督と選手の距離感というのも繊細だと思います。
「最近思うのは、彼らは僕のことを監督だとは思っていないということです(笑)。これは100%断言できますね。挨拶はちゃんとしてきますけども、普段の接し方や僕に対する態度は、お父さんか友達かどっちかですね。そんな感じです」
――田口監督の現役時代とは選手の気質も違いますか。
「僕も20年やったので、そこは徐々に変わってくるじゃないですか。最後の方では変わったなと思っていました。ルーキーの頃は何と恐ろしい世界だろうという時代でしたから。時代とともに変わってきているのは感じますね」