指導者2年目、オリ田口壮氏の今・前編「彼らは僕のことを監督と思っていない」
一流選手は振る舞いも一流「イチローはそう」
――過去と現在、それぞれに良さがあると思います。
「良くない面というのは、あまり取り上げたくないですね。そこは、今のいい部分でどう補うかを考えます。なるべく怒らないようにしているし、いいところを褒めながら、じゃあ、これやってみようかと悪い部分にちょっと付け加えたり。そうした教え方が多分、彼らにはやりやすい、受け入れやすいのだという気がしますね」
――現役時代にアメリカの野球も経験されて、考え方などが違うのは仕方がないと割り切れるようになったと話されています。
「考え方というのは、年をとるごとに変わっていくものだと思っています。ずっと一緒であるべきではないと思うし、時代とともに変えるべきだとも思う。その点では、アメリカに行ってまったく違う文化を見て、まったく違う野球を見たことが凄く刺激になっています。新しい考え方も、違う考え方もできるようになった。日本にいる時はとても堅い人間で『こうじゃないといけない』というのがありましたね。それがアメリカに行くと『何でもいいか』と」
――野球の技術面はもちろん、それ以外のことでも受け入れられるようになった、と。
「そうですね。特に野球以外ですね。野球の技術に関しては確固たるものがないと通用しない世界だし、精神的な強さも必要で、芯を持ってないとやられちゃう世界ですから。その辺は一本通っていますけど、野球をするために必要な要素以外の部分は何でもいいです」
――繊細さと図太さが必要なのだと以前、語っていました。
「そこは外せないと思いますね。何が起きても動じずに、何かあっても『そんなの俺のせいちゃうよ』というぐらいの図太さ。『しゃあないやん! 次』という切り替えの早さは必要です。その一方で、野球のプレーや人を動かしていくというところでは、繊細さと責任感がないと、絶対にどこかでミスが起きますね」
――田口監督は技術面以外の重要性についても、様々な表現を用いて言及されています。
「基本的には人間性が全部出てくるということだと思います。どこのレベルの野球、どこの世界の野球でもそう。日本でもアメリカでも、一流の選手はやっぱり一流の振る舞いをしていますよね」
――特に、それを強く感じた選手を挙げていただけますか。
「イチロー(マーリンズFA)はそうですよね。アルバート・プホルス(エンゼルス)も。他にもいっぱいいますけどね。代表的な、皆さんが名前を知っている選手となると、彼らの名前が挙がります」
――人間性が積み重なって、個人やチームの成績にも影響を与えてくる。
「そうした部分がないと言えば、嘘になると思います。プレー以外の面でもきちんとしたチーム、しっかりしたリーダーがいるチームというのは強くなっていくでしょう。それは否定できない。そこにプラスして運も絶対に必要だし、あとは怪我人の問題などもある。すべてがうまくいけば、どのチームにも優勝する可能性はあるだろうなとは思います」
(後編へ続く)
指導者2年目、オリ田口壮氏の今・後編
(「パ・リーグ インサイト」藤原彬)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)