楽天創設時の首脳陣が明かす秘話 「我々3人の一番の失敗」は…

大きな成功となった山崎武司の獲得、田尾氏「直せる自信があった」

 一方で、成功もあった。04年シーズンに4本塁打だった山崎武司氏の獲得だ。「田尾さんも山下さんもいい情報を入れてくれた」とキーナート氏。田尾氏は「崩れているところがわかっていたので、バッティングを直せる自信があった。思った以上にやってくれた」と称えた。05年からの7シーズンで191ホーマー。特に07年には43本塁打で本塁打王、108打点で打点王に輝いた。

 楽天は初年度に38勝97敗1分。首位との差が51.5ゲーム、5位とも25ゲーム差からのスタートだった。そして、9年目の13年に悲願の日本一を達成。山下氏は「星野(仙一)さんに求心力もあったが、9年間の選手の入れ替わりや成長でチームは強くなってきたと思う。そして、ファンの皆さんがイーグルスを支援し、応援してくれた」と感謝した。

 田尾氏が「マーティに監督をやってくれと言われて引き受けた時、ファンからの野次が一番、辛いと思った。でも、仙台で野次られたことがなかった。これはすごかったですよ」と言うと、「私がしょんぼりして事務所から出て行くと『大丈夫だよ』『明日は勝てるよ』と言ってくれた」とキーナート氏。続けて田尾氏が「そう、そう。『4月よりはみんな、上手くなっていますよ』とかね。負けているのに、褒めてもらえるんですよ。有り難かった。この人たちにいいゲームをお見せしたいなと、そういうエネルギーになりました」と、ファンの励ましに頭を下げた。

 東北のファンに支えられ、育てられてきた楽天。7年連続で年間の観客動員数を更新している。山下氏は「今の時代、成功していると言われるチームは業種的に固まっているが楽天、横浜、ソフトバンクですね。(Koboパーク宮城は)球場のシートを色々と作って、ベースボールをエンターテイメントにした。そこに野球好きのファンが集まってきた。チームも選手も力をもらう。横浜もソフトバンクもそういう努力をして、ファンが足を運んで喜んでくれる球場作りとファンサービスをしている。その元となったのが、楽天じゃないでしょうか」と話し、田尾氏は「会社の中で忘れてほしくないのは、東北楽天ゴールデンイーグルスという球団は、半分はファンのものですよ、ということ。ファンの人たちが何を楽しみにし、望んでいるか。考えて取り入れていい方向に持っていけば、もっといい球団になるのでは」と期待した。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY