10人チームで補欠、目指したのは体育教師…雑草捕手がたどり着いたプロの世界

好きな言葉に「楽」という漢字を挙げた斉藤誠人【写真:石川加奈子】
好きな言葉に「楽」という漢字を挙げた斉藤誠人【写真:石川加奈子】

同学年の“エリート”と同じチームに、「スター選手と同じチームになってうれしい」

 大学では文武両道を実践してきた。教育学部芸術スポーツ文化学科スポーツ文化専攻スポーツコーチング科学コースに籍を置く。現在取り組んでいる卒論のテーマは「高齢者における運動スポーツに対する能否認識に関する研究」。家庭教師を務めたり、月2回知的障害者施設にティーボールの指導に行ったりと野球以外の経験も豊富だ。

 野球一筋でプロ入りする選手とは対象的な道のりと言える。最も象徴的な存在は、同学年でチームメートになる森友哉捕手かもしれない。大阪桐蔭高2年時に甲子園春夏制覇を達成してドラフト1位入団の野球エリートだ。

「あの甲子園の準決勝、決勝を見ていました。スター選手と同じチームになってうれしいです。でも、追いつかなくてはいけない。スターを追い越せるか追い越せないのか面白いところ。自分は育成の1番下なので、どこまで這い上がれるか楽しみです」

 そう言って屈託のない笑みを浮かべた斉藤は、これまでの野球人生と同じように、どんな環境に置かれても輝きを放つのだろう。

 好きな言葉を尋ねると「楽」という漢字を挙げた。その心は、楽しむことと、そして楽をしてうまくなることだという。決してさぼるという意味ではない。「練習で10時間追い込むよりも、5時間で10時間分の内容を身につけられた方がいいと思うんです」。限られた時間の中で常に頭を使い、工夫してきた自負がある。

「今まで150キロの球を受けたことないので、慣れることが大事だと思っています。まずは動ける体をつくって、1月に自主トレに臨みたいです」。雑草捕手はプロの世界で一つずつ経験を積みながら、支配下登録そして1軍定着へとつながる自分だけの道を探っていく。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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