“戦力外目的”の選手獲得も…“経費削減”トレード連発に米メディアが警鐘
MLB機構と球団は増収も出し渋り、選手の年俸に十分還元されず
今オフのメジャーは、フリーエージェント(FA)市場の動きは遅いものの、大型トレードがすでに2件発生した。ご存じの通り、今季ナ・リーグMVPジャンカルト・スタントン外野手がマーリンズからヤンキースへトレードされたもの、そしてドジャースとブレーブスによるエイドリアン・ゴンザレス内野手、マット・ケンプ外野手、スコット・カズミア投手、ブランドン・マッカーシー投手、チャーリー・カルバーソン内野手の5人トレードだ。両トレードの主な目的が、球団の財政立て直しや年俸総額を減らすためであることは周知の事実。これを受けて、米スポーツ局「CBSスポーツ」公式サイトのマイク・アクシサ記者が警鐘を鳴らしている。
アクシサ記者が問題視しているのは、MLB機構や球団が利益を選手に還元していない点だ。記事によれば、今季MLB機構は100億ドル(約1兆1270億円)を超える利益が生まれ、来季の第一四半期には全30球団に5000万ドル(約56億3500万円)が還元されるという。だが、球団は“還付金”を選手の年俸に充てようとはせず、むしろ年俸総額を1億9700万ドル(約222億300万円)以下に抑え、ぜいたく税の対象にならないように躍起になっている。その結果として、ドジャースとブレーブスのトレードが成立し、ゴンザレスはブレーブス入りと同時に戦力外通告され、古巣ドジャースへ戻ったケンプも再トレードか解雇が濃厚だという。
また、今オフはFA市場の動きが鈍い。「CBSスポーツ」でトップ20に選ばれたFA選手のうち、12月17日(日本時間18日)現在、フィリーズと3年6000万ドル(約67億6200万円)で契約合意に達したカルロス・サンタナ内野手、エンゼルスと3年3800万ドル(約42億8300万円)で契約したザック・コザート内野手の2人に動きがあったのみ。記事では「今オフのFA市場は品薄だが、同時にチームはバーゲンになるのを待っている」と分析している。
さらに、日本で実績を残しながらも、23歳という年齢により海外アマチュア選手と同じ扱いでエンゼルス入りが決まった大谷翔平投手も例に挙げ、「ピーナッツほどの契約にしかならなかった」と“評価”。ビジネスという名目上、選手が粗雑に扱われている現状に警鐘を鳴らし、MLB選手会が何らかの抗議に出るべきだと提言した。だが、同時に現在の状況を生み出した一因はMLB選手会にあることも指摘。昨オフに更新されたMLB労使協定で以前よりも厳しいぜいたく税の取り決めに同意したからこそ、球団は年俸削減に走り、選手はそのしわ寄せを受けているというわけだ。
記事では「ドジャースとブレースのトレードが、今オフ初めての財政削減目的のトレードではないし、これが最後ではないだろう」と“預言”。残り少なくなった2017年、あるいは年明け早々にも、また球界が驚愕するようなトレードが誕生する可能性は否定できなそうだ。
(Full-Count編集部)