「楽しくて仕方ない」―阪神・藤川球児が見つけた新たな野球との向き合い方

若手選手や外国人選手が主義主張をしやすい環境作りを

「今の立場を受け入れているかと言ったら、受け入れていないかもしれない。でも、選手の起用法は監督やコーチが決めることで、自分の力が及ぶところではないでしょ。だから、そこをどうこう考えても仕方がない。マウンドで『0』に抑えるのが自分の仕事だから。これは自分の役割じゃないって思いながら投げたことは1回もないね」

 阪神ブルペンの最年長者が貫く前向きな姿勢は、後輩たちにも着実に伝わっている。また自身が“外国人選手”として過ごした経験のおかげで、マテオやドリスらの置かれた立場にも考えが及ぶようになった。

「マテオやドリスが持っているマインドを生かしながら、時には周りがいないところで『日本ではこう思われるから気を付けろよ』って伝えるようにしていますね。勘違いされたらもったいないから、そこだけ注意させて、あとは明るい部分を十分に出してもらえるようにね。彼らだけじゃなくて若い子たちにも、主義主張をしやすい環境を自分は作ってあげたいですね。マウンドではどんな個性でも発揮していい。誰も制限を掛けないから(ロッカーの)中にいる時も自由ですよ。

 メジャーって、ブルペンに必ずベテランが1人いるでしょ。戦力的には少し落ちるかもしれないけど、クローザーの経験がある実績を持ったピッチャーがまとめ役になっている。ここ(阪神)では自分がその役割を少ししながらね。自分は今、クローザーから順番に立ち位置があるとすれば、ブルペンで一番最後のポジション。そこに対して何も言わず、『ええよ、みんな楽しかったらええよ。勝てればええよ』ってやってるから、自分が楽しんでいる気持ちは周りに伝わっているのかもしれませんね」

 数字には反映されないアメリカで奮闘した日々の経験、独立リーグでの気付きが、野球人としてはもちろん人間として藤川球児の幅と深みを増した。そして、その藤川が加入した恩恵が、2017年の阪神救援陣の躍進という成果を生んだのかもしれない。

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