「楽しくて仕方ない」―阪神・藤川球児が見つけた新たな野球との向き合い方

1度は引退決意も…「野球は楽しいもの」と再確認させてくれた独立リーグ

 2015年のシーズン途中でレンジャーズから自由契約になった時、本当は野球を「辞めるつもりでいた」という。実際オリオールズからオファーを受けていたが、辞退した。実は、2014年オフにレンジャーズと契約を結ぶ前、ほぼ決まっていた他球団との契約がフィジカル検査で破談になったこともある。理由は、右肘の懸念。術後の長いリハビリ生活をようやく終えた藤川にとって、これほど大きなショックはない。

「『ダメなんだ、俺の肘』って思いましたね。この時も辞めようと思った。でも次にオファーをくれたレンジャーズのフィジカル検査では問題にはならなかったんですよ。チームによって基準が違うから。ただレンジャーズを離れた時は『もうしんどいわ、いいです』って思いましたね」

 野球が嫌いになったわけではないが、自分が身を置く状況に疲れていたのだろう。そんな藤川に「野球は楽しいもの」と再確認させてくれた場が独立リーグ(四国IL高知)だった。

「最後の答えを出しに行ったのが独立リーグだった。野球をするっていうのが自分のやりたいことであって、どこでやりたいのかが一番にあるわけじゃない。お金にならなくても楽しいものは楽しい。独立リーグで試合をして、抑えて楽しい、打たれて悔しいって、純粋に感じられたんですよね。辞めるのはいつで辞められる。だったら、楽しく野球を続けようって。

 マイナーで投げている時、同じチームの野手が本当は一塁手なのに三塁守ったり外野守ったりするんですよ。『大丈夫か?』って聞くと、『いいんだよ、それが野球なんだから。好きでやってるんだから』って。何だか、そう言っていたのが分かるようになりましたね」

 2016年に阪神に復帰した後も、その意識は続いている。かつては絶対的守護神だった男が、2017年は敗戦処理を任されることも増えたが、「一番楽しいのはマウンドに上がって『0』に抑えることだから、どこで投げても同じ。楽しいし、何も変わらないですね」と大きな笑みを浮かべる。

若手選手や外国人選手が主義主張をしやすい環境作りを

RECOMMEND