【3割打者を考える(2)】なぜ、3割打者は時代を超えて「優秀」なのか?

3割打者は平均以上の「優秀な打者」

 話を元に戻す。現在のMLBは1871年、ナショナルリーグの前身であるナショナル・アソシーエーション創設がその始まりだとされている。米データ専門サイト「Baseball Reference」によれば、この年は9球団が参加。各球団が30試合前後を戦ったが、リーグの平均打率は.287だった。100打席以上立った打者は65人いたが、3割以上は24人。メジャーリーグの草創期の頃から「3割打者」は優秀だった。

 以後も、ナショナルアソシエーション、そしてナショナルリーグの打率は概ね.250台から.280台で推移した。MLBがナショナルリーグ、アメリカンリーグの二大リーグ制になった1901年のナ・リーグのリーグ打率は.267、ア・リーグは.277、以来116年経った現在まで、リーグ平均打率には大きな変化はなく、3割を超えることもほとんどなかった。

 つまり、野球の歴史のほとんどすべての時代で、3割打者は平均以上の「優秀な打者」であり、打者にとっては「3割」を打つことが大きな目標になっていたのだ。それは1936年に発足した日本のプロ野球も同じだ。戦前の一時期を除いて、リーグ打率は.250前後であり、3割打者は常に優秀な打者の代名詞であった。

 なぜ、そうなのか?野球はどんどん変化しているのに、平均打率は変化しないのか。そして3割打者はなぜ、いつの時代も「価値」があるのか。

 アメリカのセイバーメトリクス研究者ボロス・マクラッケンは1999年、野球のデータを集計して行く中で、ある事実を見つけた。マクラッケンは「本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合」をBABIP(Batting Average on Balls In Play)と名付け「BABIP=(安打-本塁打)÷(打数-奪三振-本塁打+犠飛)」という数式を用いた。これを計算した結果「どんな投手も、打者も、リーグもBABIPはだいたい3割前後になる」ことを発見した。

BABIPと打率の関連性は…

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