【3割打者を考える(4)】平均打率に大きな変化なしも「4割打者」はなぜ絶滅?

今後4割打者誕生は? NPB100打席以上で唯一の4割を記録した近藤

 MLBは、1947年まで有色人種の選手を排除していた。またマイナー組織も未整備だった。しかしMLBはジャッキー・ロビンソンを手始めに黒人選手やヒスパニック系の選手を大量に受け入れた。また戦後、各球団は全米にあった独立リーグを傘下に収め、マイナー組織を整備。さらに1950年代に入ると、未開の地だった西海岸に進出した。1960年以降はエクスパンション(球団拡張)が起こり、MLBはそのすそ野をどんどん広げていった。これとともに、MLBでプレーする選手のレベルは高まり、均質化していったのだ。

「4割打者」はまだリーグ、機構が小さく、選手も少なくて実力差が大きい時代の産物なのだ。

 MLBだけではない。KBO(韓国プロ野球)の唯一の4割打者・白仁天(打率.412 元東映、ロッテ)もリーグ創設年の1982年に出ている。NPBには4割打者はいないが、創設年の1936年春夏シーズンにはタイガースの小川年安が.477の高打率を記録。当時、個人記録を表彰していなかったが、実質的な首位打者だった。その後、KBOもNPBも整備が進み、選手の数が増えるとともに、4割打者は「遠い夢」になったのだ。

 しかし「打率4割」は、不可能な数字と決まったわけではなく。そのあたりに壁が作られているわけではない。事実.390台まで肉薄した選手は何人かいる。

 2017年、日本ハムの近藤健介は231打席167打数69安打、打率.413を記録した。これはNPB史上最も多くの打席に立っての4割だ。他に100打席以上で4割を記録した選手はいない。

 日本のプロ野球も大好きだったスティーブン・ジェイ・グールドは、2002年に死去した。最晩年、イチローの活躍に驚いていたという。近藤健介には、グールドが生きていたら著作を書き直したくなるような活躍を期待したいものだ。

【図表】NPB歴代シーズン打率ランキング

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