東京五輪に向けても着々と強化、将来の野球強国へオランダが秘める可能性
毎年のように変わるルール、東京五輪を見据え優秀な選手が集結
また、日本と違いクラブチーム特有の事象も存在する。オランダの野球は毎年ルールを変更する。アマチュアU18は東京五輪を見据え、各クラブチームのアカデミーに属する優秀な選手(カリブ海地域も含む)がアムステルダムの施設に宿泊しながら練習をしている。土日は各クラブのアカデミーに戻り、リーグ戦をこなす。そこで、好成績を残せば、何歳でも、属するクラブのトップチームでデビューすることが可能。オランダシリーズ初戦でも、ネプチューンズアカデミー所属のピテルネッラ選手(17歳)が代打でデビューを果たした。ここでは三振に倒れてしまったが、素晴らしい経験になることは間違いない。
この日の試合は両チームのベテラン投手、ディエゴ・マークウェル(ネプチューンズ:37歳)とロブ・コーデマンズ(L&Dアムステルダム:43歳)の2人による投手戦が繰り広げられた。そしてファンミル投手の登板は2点を追う展開で迎えた7回1死の場面。32歳のファンミルは試合の終盤を任されることが多かった。
国民の平均身長が185センチと言われるオランダ人でも一際目立つ216センチ、マウンドに上がれば一段と高くなる。投球フォームは楽天時代と変わらず、長身を生かした真上から投げおろすオーバースロー投法。球種はストレート、スライダー、スプリット、チェンジアップの4種類である。ストレートの球速は平均148キロと健在であり、ファンミルの豪速球を捉えられる相手打者はおらず、2回2/3を投げ、被安打0、奪三振3の好成績であった。
試合後にオランダU18マネジャーであるエリック氏にファンミルについての感想を求めると、「当然優れた投手である。しかし、球が速いだけでは簡単に合わせることができるし、綺麗な真っ直ぐは打順が一回りもすれば捉えることができる。今後は緩い変化球を覚えるなど、投球スタイルを変えないと長く活躍することは厳しいかもしれない」と意外にも辛口コメント。
フーフトクラッセで一番のスピードボールを誇るファンミル投手だが、今後も活躍を続けるには新たな武器が必要となる。かつては楽天でプレーし、現在は母国に戦いの場を移したファンミルは試行錯誤を続けながら奮闘している。年々レベルが上がっているオランダ国内リーグ。現状、世界大会ではカリブ海に浮かぶオランダ領キュラソー島出身のメジャーリーガーに頼る面が大きいが、オランダ本国の選手もレベルアップを果たせば、米国や日本に肩を並べる野球強豪国になるかもしれない。