筒香嘉智が勇気を振り絞った12分間スピーチ 球界の現状に違和感と危機感

「違和感」を抱いたきっかけは…

 筒香が以前から抱いていた違和感を明確にしたのは、2015年オフにウインターリーグ参戦で訪れたドミニカ共和国での体験だった。ウインターリーグでプレーをしながら、現地ではメジャー球団のアカデミーを訪問したり、公園や空き地で野球を楽しむ子供たちと触れ合った。その時に目の当たりにしたのが、心から野球を楽しむ子供たちと、ミスを叱らず長所を褒めながら見守る指導者の姿だった。

「小学生の子供たちがジャンピングスローしたり、グラブトスを当たり前にして、ミスしても指導者が何も怒らない。選手は失敗を恐れずに、何回も失敗して、どんどん失敗しても失敗しても次のことにチャレンジしていく。できないことも何の躊躇もなくチャレンジしていく姿を、僕は初めて見た。バッティングの方もとにかくフルスイングです。変化球を投げる投手はほとんどいません。真ん中にストレートを思いっきり投げ込んで、バッターはフルスイングっていうのが基本でした」

 ドミニカ共和国の人口は約1080万人と日本の人口(約1億2670万人)の約12分の1だが、昨季メジャー開幕ロースターには93人が名を連ねた。日本人選手はわずか8人。「世間でも世界で通用する人材が必要とされる中、野球界がこれだけ遅れているのも事実。日本もいいところはたくさんあるが、海外に目を向けて、そこからいいものを吸収することはすごく大事だと思う」と力を込めた。

 日本では、野球に限らず、子供たちに考えさせる=想像力や創造力を伸ばす教育が遅れている。子供たちが考えを巡らせる前に、指導者や父兄が待ちきれずに答えを教えてしまう例は少なくない。「それが将来の子供たちのためになっているかというと、僕はなっていないと思います」と筒香は言う。では、なぜ指導者たちは答えを教えてしまうのか。それは「育てる」よりも「勝つ」ことに主眼を置いた「勝利至上主義」が根強いからだ。

 現在、小学生から高校生に至るまで、主な野球の大会はトーナメント方式で行われている。トーナメントは負けたら終わり。指導者が勝利にこだわるチーム作りに走るのも無理はない。だが、筒香は興味深い指摘をする。

金属バットの使用による弊害も

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