災害に屈しない誇り高き選手たち―日本人トレーナーがプエルトリコで見た絆

劣悪な環境にも選手たちは誇りを持ってプレー

「(16年オフに松坂大輔がプレーした)ヒガンテス・デ・カロリナは本拠地が使えず、全試合ビジター。優勝したカグアスも本拠地が使えず、夏場にマイナーの2Aのチームが使っている隣町の収容1000人未満の小さな球場を使っていました。ただ環境は悪く、ロッカールームも何もない。控え室といってもテーブルも何もない小さな部屋があるだけ。チームにはメジャー経験のある選手たちもいましたが、彼らは床にタオルを引き、ここでやるか、と笑いながら荷物を広げていた。僕らトレーナーはお客さんも通る室内の通路で選手のマッサージをしていました。僕は昨オフはメキシコのウインターリーグのチームにいたのでプエルトリコは今年が初めてでしたが、やはり例年とは違ったようですね」

 そんな劣悪な環境の中でもチームを盛り上げていたのが、ベテランの選手たちだったという。試合数の減少で選手たちの給料も例年よりも少なくなったが、文句を言う選手は誰一人いなかった。チームには、かつて楽天、DeNAでプレーした40歳のランディ・ルイス内野手もおり、皆が誇りを持ってプレーをしていたという。

「長年やっている選手が、チームのために誇りを持って戦おうという話をしたんです。今年はリーグも短いけど、だからこそ1試合1試合が大事になる。毎日プレーオフのつもりでプレーしよう、と。ハリケーンのことを口に出す選手はそれほどいなかったけど、みんな心の中では、国のために頑張ろうと思ってやっていたと思います。

 試合日程や開始時間が前日に変わることも多く、時にダブルヘッダーになることもあったので、トレーナーとしても大変でした。治療に必要なキットを仕入れにいけなくなったことも何度もあり、時に知人を通じて外部の人から必要なものをもらっていました。本当に色んなことに対しての対応力がつきましたね。僕たちはプレーオフ準決勝で敗れ、カリビアンシリーズに出場することはできませんでしたが、拮抗した面白い試合が多く、すごく充実したあっと言う間の1か月でした。カグアスの選手たちにはぜひ優勝して、国を盛り上げてほしいですね」

 2年連続4度目のカリブチャンピオンの座を目指すカグアス。有馬トレーナーも、プエルトリコ代表としてメキシコの地で戦っている選手たちの活躍を、プエルトリコ国民同様、切に願っている。

(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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