「こんなことは初めて」―もがき苦しむ世代最高の左腕、2016年燕ドラ1の今

持ち続ける“こだわり”「ストレートで勝負できるように」

「ストレートの質にこだわっていきたいと、ピッチングコーチと話していたんです。球が低めに垂れてしまったら腕をしっかり振る。その振り方もしっかり見直して、ひとつひとつをクリアしていく。今はそれしかないです」

 寺島といえば、高校時代は150キロのストレートにキレのあるスライダーを織り交ぜ、打者をねじ伏せてきた。履正社では1年夏からマウンドに立ち、経験のある上級生投手を差し置いてその秋からエースに。3年夏の甲子園で見せた、ストレートで押す気迫を前面に出したピッチングは記憶に新しい。

「追い込む練習の中でやっているから、そう(紅白戦で打たれた)なったんでしょうけれど、それはみんな同じ。高校生相手で出来ていてもプロのバッター相手となるとそうはいかない。入団前から覚悟していたとはいえ、現実になってしまうと何も出来ていなくて……。でも、ストレートで勝負できるようになる。これは大前提です。自分の最大限のスピードを出せるようにして、その中で変化球でもちゃんとストライクを取れるようになりたいです」

 その日はブルペンで43球を投げ、感触を確かめた。時折球が抜けていたのは気になるが、日を重ねるごとにコーチからは「腕は振れるようになってきた」と言われているという。21日の巨人との練習試合では2回を投げ1失点だったが、2奪三振、無四球と数字は悪くはない。

 昨年、甲子園で投げ合った藤平尚真(楽天)は一足先に1軍で勝利を挙げた。「早く感覚を掴んでいきたい」と語気を強める左腕の表情には、ただならぬ“覚悟”が漂っていた。

(沢井史 / Fumi Sawai)

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