4241日ぶり白星の中日・松坂大輔 勝利を呼び込んだ百戦錬磨の勝負勘

押し出し四球を与えた直後、梶谷に初球を打たせて一ゴロに

 続く梶谷への攻め方も圧巻だった。「勝負は早いと思ったので、チェンジアップでしたけど、1球で仕留めるつもりで投げました」。四球の後の初球を狙うのは打者の定石。四球を与えた後の投手はストライクを欲しがる傾向にあるから、だ。だが、これも松坂は冷静に見極め、打ち気になる打者の心理を逆手に取った。

 初球。選んだのは、打ち気を誘うようなチェンジアップだった。おそらくストライクを取りに来る真っ直ぐを狙っていたのであろう。梶谷は泳がされ体勢を崩された状態で、外角低めへのチェンジアップを打った。次の瞬間、ボテボテの力無い打球が一塁へと転がっていた。松坂がDeNA打線との勝負、駆け引きに勝った瞬間だった。

 甲子園春夏連覇、甲子園決勝でのノーヒットノーランにはじまり、ルーキーでの最多勝獲得やWBC2大会連続MVP、レッドソックスでのワールドシリーズ制覇と、数々の大舞台、修羅場を経験してきた松坂。その投手としての経験値というべきか、技術というべきか…。こう考えられることが、そして、ここ一番でその通りに投げられることが、投手としての重要な力であり、それがあるから勝てるのだろう。日米通算165個の白星を積み上げてきた力の真髄なのだろう。

 試合後、森繁和監督も脱帽した。「四球で押し出しで1点よりも、打たれて2点、3点のほうが嫌だって、そういうことを考えられる選手が他にいるのかなって。ヤツらしいな、と思います」。こう語る指揮官の表情には、少しだけ笑みがこぼれた。

 松坂の初勝利に本拠地は大いに沸いた。敗れたベイスターズのファンでさえも、祝福の声をあげた。球団の垣根を超えて、これほど応援される選手も珍しい。6回3安打8四死球1失点。内容としては、素直に褒めらる出来ではなかったが、松坂大輔が松坂大輔であるワケを存分に感じさせられる114球だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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