ドミニカ共和国の育成システムに見る、日本人が学ぶべき点とは何か

トーナメントよりもリーグ戦

 日本の野球界の場合、小、中、高、大と年代別にカテゴリーが分かれており、カテゴリーごとの結果(勝利)が重要視される。一方、ドミニカではリーガ(6歳から12歳)、プログラム(13歳から16歳)、アカデミー(16歳から)と段階を経て、上を目指す選手は18歳以降で渡米という流れになる。アカデミーはMLBのチームが持つ下部組織であり、プログラムでピックアップされた選手が16歳6ヶ月になるとアカデミーと契約できるシステムだ。そして目標はすぐにメジャー昇格ではなく、数年後にメジャー昇格すること。そのため、選手としてのピークを25歳から35歳に設定する、先を見据えた指導が大きな特徴と言える。

 セミナーではドミニカで撮影された練習風景の動画が紹介された。リーガの子がバッティング練習で思い切りよくフルスイングする映像やプログラムの選手が緩いゴロを逆シングルで繰り返し捕球する映像……。日本であれば「そんな大振りではダメだ」「正面に入って捕れ」と指摘されがちだが、ドミニカでは今の結果を求めず積極的にチャレンジする姿勢が大事だ。同時に細かいプレーは経験を重ねていくことで身につけられるという考えも持っている。

 日本の高校野球は負けたら終わりのトーナメント方式に対し、同世代となるドミニカのアカデミーはリーグ戦方式で公式戦を行う。公式戦の時期である6月から8月にかけて、1チームが72試合を戦う。投手に目を向けると中5日のローテーションを組み、球数は最大でも75球から80球。直球中心で打たれてもいいからどんどんストライクを投げていく。試合経験を積むことで試行錯誤を繰り返し、メジャー昇格に向かって成長していくのだ。

 また、指導者は選手がミスをしても咎めることなく、「次だ、次」とポジティブな姿勢で選手をサポートしている。「ドミニカの指導者は選手と同じ目線で、敬意を持って接している」と阪長氏は言う。日本の野球界では現在、競技人口減少や甲子園を頂点とした勝利至上主義など多くの問題を抱えている。日本野球が良い方向へ向かうためのヒントが、ドミニカの取り組みに隠されているかもしれない。セミナーを終えて阪長氏は「初めてお会いした方も多く、うれしかったです。今日だけで終わらず、皆さんと協力して少しでも良い方向へと変わっていければ」と手応えを感じていた。

(「パ・リーグ インサイト」武山智史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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