「自由契約から首位打者」史上初の快挙に挑むヤクルト坂口智隆

ポジション争いで内野に転向、打撃抜群のユーティリティープレーヤーに

 しかし2018年、状況は変わった。キャンプ直前にMLBから青木宣親が加入。外野は青木、バレンティンが確定。雄平や若手の山崎晃大朗もいるため、坂口のポジションは保証されないことになった。キャンプではグラブをミットに持ち替えて、一塁を守る坂口の姿が見られた。

 オープン戦で坂口は16試合40打数17安打、打率.425。またチーム最多安打を記録する活躍を見せた。ポジションは外野13試合、一塁5試合とテスト段階ではあったが、打撃面では坂口は打線から外せない存在となっていた。開幕戦、坂口は「6番・一塁」で先発し、5打数4安打2打点と大活躍。以後も打撃好調を維持し、正一塁手の座を手にした。

 坂口は2017年まで15シーズンのキャリアで、外野以外のポジションは一度も守ったことがない。しかしここまで1失策と無難にこなしている。また、試合経過によっては左翼も併せて守っている。チームにとっては苦肉の策としての一塁起用ではあったが、打撃が抜群で、しかも使い勝手の良いユーティリティプレイヤーを得たことになった。

 坂口が首位打者を取れば、34歳3か月での初タイトルとなる。これは日本人の初首位打者としては、1987年の新井宏昌(近鉄 35歳6か月)、2007年の稲葉篤紀(日本ハム 35歳2か月)、1993年の辻発彦(西武 35歳0か月)についで、4番目の高齢記録になる。

 それ以上に、自由契約になった選手がその後首位打者になれば、NPB史上初めてのことだ。逆境になればなるほど力を発揮する坂口の今シーズンに期待したい。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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