山田久志氏が語るアンダースローの美学 「みんな型にはめようとする」
今春のキャンプでは昨年オフにサイドスローに転向したオリックス・佐藤世那を指導
また、昨年オフからサイドスローに転向したオリックスの3年目右腕、佐藤世那投手には春季キャンプで臨時投手コーチとしてアドバイスを送ったが、課題は多いという。
「体は横にいくんだけど、手が上からだったり、体の使い方が理に適っていなかった。なかなか簡単じゃないね。時間はかかると思うよ。彼はあのオーバーハンドの投げ方で投げていたら肩や肘に負担がかかるし、故障もしてしまう。1軍の枠を勝ち取るのは大変なこと。彼はそれを分かっているから、生き残るためにもサイドスローに挑戦したんじゃないかな。悪いことではないけど、自分で工夫していかなきゃいけないね。コーチのアドバイスもあるけど、自分で自分のものにしていかなきゃいけない」
牧田や佐藤世も苦戦しているが、山田氏は球界に自身のように特徴あるフォームで投げる投手が少なくなってきていることが残念だと話す。全国を回り、少年野球チームで指導も行っている山田氏だが、各地にサイドスローやアンダースローでの投げ方を教えられる指導者が不足しているため、これからはもっと減るだろうと考えている。
「同じような投げ方でみんな型にはめようとするけど、そうじゃなくたっていいもんね。『こういう投げ方もあるんだ』というのを見せるのも野球だと思う。昔はいろいろな投げ方のピッチャーがいた。マサカリ投法の村田兆治、トルネード投法の野茂英雄、自分はサブマリンと呼ばれた。特徴ある人がいて、投球フォームでお客さんに喜んでもらえた。もっとそういう選手が出てきてほしいね」
史上最高のサブマリンと称され17年連続2ケタ勝利を挙げた山田氏は、自身のように特徴ある投げ方で活躍する投手が、再び球界に現れることを期待している。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)