試合中に「投げようか?」 マ軍選手が「打撃投手イチロー」と過ごす貴重な時間

元レッドソックス外野手の父も「彼を参考にするように」

 その時、返ってきた答えはシンプルだが、それゆえに説得力があったという。

「イチローは『もう少し違った心の準備をすると思う。毎日、もう少し何かできるんじゃないかって、やるべきことを探したと思う』って言うんだ。その少しの積み重ねが、自分が気付かないうちに、成長につながるって。今ですら、準備に余念がないことで知られる人物が、そういうことを言うんだ。なるほどって、目から鱗が落ちる思いだったよ」

 ロマインの父は、レッドソックスで7年プレーした外野手だった。イチローがメジャーデビューした2001年にはすでに現役を引退していたが、テレビに映る背番号51を見るたびに、2人の息子たちに「彼を参考にするように」と言い続けたという。2人の息子たちとは、現在マリナーズに所属するアンドリュー、そしてヤンキース捕手のオースティンだ。

 2012年途中から2014年までヤンキースで弟オースティンと共に戦ったイチローは、マーリンズを経て、この春、6年ぶりにマリナーズに復帰。兄アンドリューが挨拶に出向くよりも先に、憧れのレジェンドから「君の弟とヤンキースで一緒だったよ」と声をかけてくれたという。「挨拶をしてもらって、今は打撃投手もしてくれる。今年は正直、想像を超える出来事の連続だよ」と、目を丸くするのも無理はないだろう。

 メジャー9年目、32歳のロマインが来季以降も現役を続けるためには、1試合1試合、1打席1打席、無駄にしていい瞬間はない。「もう少し何かできるんじゃないか」――。憧れのレジェンドの言葉を胸に、成長の歩みを続けていく。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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