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「あのネクタイは額に入れてある」―元マーリンズGMが語るイチローとの日々

6月中旬の蒸し暑いある日。フロリダ州北部にあるマーリンズ傘下2Aジャクソンビルの本拠地球場バックネット裏には、いつもと変わらず各球団のスカウトがプレーの1つ1つに厳しい目を光らせていた。そんな熟練のスカウトの中に、見覚えのある顔があった。2015年途中からマーリンズで監督代行として指揮を執ったダン・ジェニングス氏だ。2016年1月からナショナルズのGM補佐に就任して以来、時間が許す限り、自身の原点でもあるスカウト活動に出掛けているという。

インタビューに応じたダン・ジェニングス氏【写真:佐藤直子】
インタビューに応じたダン・ジェニングス氏【写真:佐藤直子】

思い出のネクタイを返却しようと打診するも…

「イチの代理人を務めるジョン・ボッグスから打診があった時は、何度も確認したんだ。4番手だけどいいのか?って。その時点ですでに素晴らしいキャリアを積み上げていたしね。だけど、私がマリナーズのスカウトだったこともあり、パット・ギリックス元GMやルー・ピネラ元監督からイチの素晴らしさを繰り返し聞かされていたことも事実。それで実際に本人に会ってみようと、首脳陣で揃って日本を訪れたわけだが、その人柄にすぐに惹かれてしまったんだ」

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 イチローの野球に対する姿勢や思いを存分に知ることができたと同時に、遠路はるばるやってきた来訪者に対する細やかなもてなしの心や、ぎこちなくなりかねない初対面の場を和ませるユーモアセンスにも触れた。イチローはその後3年をマーリンズの一員として過ごしたが、ジェニングス氏が「契約は間違っていなかった」と実感するまで時間はかからなかったという。

「クリスチャン・イエリッチ、マルセル・オズナ、ジャンカルロ・スタントン、ディー・ゴードン……彼らはイチを大歓迎し、少しでも知恵と経験を学ぼうと懸命になった。イチが試合に向けて行う準備の入念さを知らない人はいないと思うが、実際に目の当たりにすると感嘆の声しかあがらない。しかも、毎日だ。先発出場しないと分かっていても、同じ準備を繰り返す。何があっても変わらぬ姿勢は、期待の若手からチームの中心選手に成長する過程にあった選手たちにとって、最上級のお手本になったはずだ」

 今季から6年ぶりにマリナーズに復帰したイチローは、5月に選手から会長付特別補佐に立場を変えた。その時、イチローの携帯にショートメールを送ったというジェニングス氏は、まずは「おめでとう」と伝えたという。

「マリナーズにとってもイチにとっても素晴らしい選択だと思った。だから『フロントオフィス入り、おめでとう』ってメッセージを送ったんだ。フロントと言えばユニホームではなくスーツ組。だから『君からあの時もらったネクタイを返した方がいいかな?』と聞いたら、『その必要はありません。来年にはまたプレーしますよ』って返事が届いたんだ。

 2019年にマリナーズは開幕シリーズを日本で迎えるそうだね。そこにしっかり焦点を当てて、プレーする準備を進めるようだ。イチ、日本のファン、マリナーズにとって、これほどパーフェクトなことはない。私も日本まで見に行きたいくらいだ」

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