選手の命に関わるにもかかわらず…判断が極めて難しい「脳震盪」の怖さ

アスリートを救う呼気による検査 研究段階ながら大きな成果

 現在、朝本医師を中心に取り組んでいるのが、アスリートの呼気を使った検査、治療である。これらは脳震盪だけでなく、ドーピング対策にも役立つと考えられている。従来は血液の採取によって血液中の構成物質などを検査していた。しかし血液採取の場合、効率、リスクなど多くの面で不備が多かった。

 例えば、検査結果までに時間がかかるとともに、その内容も十二分とは言えなかった。また呼気検査の場合、一番は血液採取の際のようにアスリートの身体に針を刺す必要もない。そしてコストも比べ物にならないほど下げることも可能なのである。

 まだ研究段階ではあるが、大きな成果を挙げている。学生からプロまで多くの競技者に協力してもらっているが、中でも格闘家やボクサーのデータには如実に脳震盪発症時の構成物質が現れて分かりやすいという。例えば、あるボクサーの試合前と試合後に呼気を採取。試合内容によって楽勝のKO勝ち、そして打ち合いの乱戦などではデータが明確に異なってくる。

「脳震盪の起こる可能性は、格闘家やフットボールだけではない。バトミントンだって転んで頭を打てば発症する。野球のデッドボールや接触プレーもそう。どんな競技、アスリートに対しても適切かつ正確に判断できるようにしたい」

 先日、日本で初めて発足したグリーン・スポーツ・アライアンス(GSA)。スポーツをプラットホームに人々が真の幸福な生活を送れるように活動している。GSA理事に名を連ねる朝本先生は語る。

「GSAの活動は決して経済活動だけではない。スポーツをプラットフォームに誰もが豊かな生活を送る。その可能性がスポーツにはある。私は医療の立場からGSAの活動に携わって行きたいと思います」

 医療の進歩はまさに日進月歩。今日やったことがすぐに明日、結果につながるわけではない。だがこういった活動に賛同し日々、動いている人が存在する。ここのところスポーツ界にネガティブな話題が多い。しかし時代が変わろうが、常にスポーツは夢を与え続けてくれる。スポーツは決して死なない。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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