五輪出場は希望薄もアジア野球が目指す発展 平坦ではない国際大会出場への道
東アジアカップで知った参加チームが直面する現実
アジア選手権には東西のアジアカップの開催国と優勝国が参加できるため、今回は香港とフィリピンが東京五輪へ向けての第一関門を突破したことになる。しかし、参加していた各チームはそれぞれの社会的事情や不安を抱えながら、やっとの思いで大会に出場していたのだ。
香港で選手指導にあたっている宮野友宣氏は「香港では野球はロイヤルスポーツ。学歴社会の香港ではエリートの選手たちが多い。道具を揃えるためにお金がかかることから香港のすべての人がプレーできる訳ではありません」と話しており、日本のように誰でもプレーできる環境ではないことを強調した。
また、シンガポールで野球普及に尽力し、代表監督も務める内田秀之氏は「シンガポールでは兵役があります。選手として大事な時期である19、20歳の時に兵役に行ってしまうためチーム編成が大変です。兵役に行けば、彼らはそのまま野球を辞めてしまうのです」と悲痛な思いを口にしている。
このようにアジア各国では社会的問題を抱える中で選手たちはプレーしており、国際大会にはやっとの状態で出場している場合が多い。今回の東アジアカップの場合は東京五輪への第一歩という位置づけの大会でもあるが、現実的に五輪出場を叶えることは難しいだろう。それでも現地で奮闘する関係者や選手たちにとって、東京五輪や国際大会を目指すことは自国の野球の成長や競技自体を続ける1つの目標となっている。そして、考えるべきは五輪が終わった後どうするのか。日本も含めた世界の球界全体で、今後の発展のために次の一手を考える必要がありそうだ。
(豊川遼 / Ryo Toyokawa)