「楽しみながらプレーをする」海外を知る指導者たちが子供たちに伝えたい思い

子供たちの自主性に任せ、試合で学ぶ

 開会式が終わると、田久保チーム、萩島チームにメンバーが分かれ、各チームのキャプテンを“立候補”で選出した。

 ウォーミングアップは「10分間のみ」。子供たちは与えらた時間で、自分らで考え、行動した。この「10分」の狙いについて、田久保氏は次のように説明する。

「日中、学校で体育など運動もしており、各自スクールに来てすぐにグラウンドへ入り、壁当てやキャッチボールをしている。子供にウォーミングアップの目的意識の認識を持たせることは難しいが、それぞれに考えさせ、実行させている」

 試合では、自チームで守るポジションに限らず複数のポジションに挑戦したり、多くの子供たちがピッチャーを務めたり、実践を通じた成長を促していた。試合で生じたミスに対しても、怒ることや特別な指導をすることはなく、自分たちで課題を見つけさせる取り組みが見られた。初対面の子供たちで組んだチームにも関わらず、均衡した白熱の試合展開となった。

 試合が終わると、子供たちは簡単な英語も交えながら泥だらけのユニホーム姿で、笑い声を響かせた。まさに、海を渡り野球を楽しんだ主催者コーチたちの“Play Ball”(楽しみながらプレーをする)というモットーそのものだ。

 近年、日本の若年層における野球の競技人口は、激減の一途をたどっている。理由は千差万別とされているが、その傾向に歯止めをかけるためにも「子供が野球を楽しむ」という取り組みは重要なことなのかもしれない。

 スクールでは、2時間の活動時間のうち、1時間半を試合に費やした。

 現在、日本の少年野球では“公式戦”が増加している。試合数が増えれば、出場できる選手の数も増加するように思えるが、公式戦では出場するメンバーはレギュラーに固定されてしまうことがほとんどだ。欧米では、スポーツをクラブ単位で実践し、試合に出場できない選手は他のクラブへ移籍したり、1つのクラブから複数のチームを大会にエントリーさせるなど、全員が試合に出られる仕組みを取っている。

 そういった海外事情を知る人々が運営する、国境なき野球団「All Nations Baseball」には、試合の中でこそ得られることがある、という信念の下、今後も野球の普及活動を続けていく。

(大森雄貴 / Yuki Omori)

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