PL学園時代の思い出は「寮」 ロッテ今岡2軍監督が伝えたい「失敗のススメ」

子供たちにとってプロ野球より具体的に描ける甲子園の夢

「高校時代、野球で一番の思い出と言えば、3年春に出場した甲子園。甲子園に行きたくて強豪高校に入ろうと思った中で、かすかに1回だけ出られた。それでなんとなく、気持ちがスッとしましたよね。

 甲子園はやっぱり特別なもの。プロ野球選手になりたいと思っても、小中学生にとってはあまりに遠い夢。だから、みんなプロ野球に行く前の1つの目標として『甲子園に行きたい』と思っていると思います。小中学生には甲子園の方が、より具体的に描ける目標なので」

 東洋大に進学後、1996年ドラフト1位で阪神に入団し、憧れだった甲子園を主戦場とすることになった。だが、高校3年の春に足を踏み入れた甲子園は、心の中で違った位置づけになっている。高校時代の仲間と集まれば、もちろん花が咲くのは甲子園の話。「以前はみんな、互いの結婚式に出ては、当時の話で盛り上がりましたよ。今は子供も生まれて、集まる機会も減ってきましたけど、集まれば昔の話に花が咲きますよね」と笑う。

 かつての自分と同じように、練習に練習を重ねて、甲子園出場を目指す球児たちに伝えたいことがある。「野球ってほぼ失敗なんでね。試合で数多く失敗して下さいってことです」という。

「失敗を恐れずにっていうよりも、絶対失敗するんで。10打数3安打で成功とされるんだから。だったら、逆にいっぱい失敗した方が、いろいろな糧になる。そこから学ぶことの方が多いですよ。最初から失敗しろと言っているわけじゃないけど、野球は失敗するスポーツ。100回失敗しても101回目で成功すればいい。1000回でも1万回でも失敗すればいい。その後に1回成功するだけで、その失敗を笑うことができますから。プロ野球に入ってからもそうですよ。たくさん失敗して1回成功した時の喜びがある。1年2年調子の悪いシーズンがあっても、どこかできっかけを掴んでポンって上がれば『あんな時もあったなぁ』って笑えるから」

 首位打者になったのも、打点王になったのも、そしてオールスターに5度出場したのも、何度も失敗を繰り返した先に待っていた喜びの1つだ。「失敗をして下さい」。そんな言葉を聞いて、少しだけ心が軽くなる高校球児もいるかもしれない。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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