元燕・中島彰吾が豪州チーム入団 育成から世界へ「MLBも目指します」
海外で得た自信、そして未来の展望
オランダでの挑戦に一区切りをつけた中島が、次なる挑戦の場として選んだのは豪州だった。シドニー・ブルーソックスが所属するプロリーグは、2018-2019年シーズンから全8球団の2地区制に変更され、新たなスタートを切る。豪州は世界中の若手選手が集まる武者修行の場で、NPB球団でも選手を派遣するチームは多い。中島はまた新たな形で、海外への憧れを“実現”。日本・台湾・オランダ・豪州と、野球人として誰も経験したことがない道を歩んでいる。
台湾での試合経験を経てオランダに渡った中島は、異国で投げ続ける中で自らの行動や考え方が大きく変化していったという。「日本にいた時はプレー環境が整っていましたが、オランダはまったく逆の世界です。食事はもちろん、体のケアなどすべて自分でやらなくてはなりません。それが僕にとって大きなことでした。この経験のおかげで今、自分自身の人生を歩めていますし、昔の自分よりも向上心があると自信をもって言えます」と、生き生きとした口ぶりで話した。
NPB球団を退団した選手が歩む主な道は、独立リーグや社会人チームでのプレー機会を探すか、引退して一般企業へ就職したり、自営業を営むものだ。だが、中島が今歩むのは、まったく違った道。今回の豪州行きが決定した直後でも、すでに未来の展望を胸に秘めている。
「プレーするからにはトップレベルでやりたいですね。MLBも目指します。現在はオランダで野球教室等を通じて子供たちに教える機会をいただいていますが、同じ夢を持つ子供たちも皆、ライバルです。そして、いつかは自分の経験を次の世代に伝えていきたいと思います」
ヤクルトを戦力外になった時、中島の口からこんな言葉が出るとは誰も想像しなかっただろう。当時の状況は、言ってみれば「2死満塁のマウンド」に立たされたようなものだ。人生のピンチに立たされた中島を救ったのが、台湾とオランダで得た経験だった。そして、今度は豪州で未知の世界に飛び込んでいく。
育成選手から世界へ――中島の野球人生はこれからが本番だ。
(豊川遼 / Ryo Toyokawa)