宇和島の剛腕が上甲監督に届けた聖地1勝 「監督のもとで野球ができてよかった」
甲子園で見せる“上甲スマイル”は「逆に気持ち悪かった(笑)」
全国制覇も目指せるメンバーが揃っていた剛腕・平井を擁する宇和島東の夏は2回戦敗退。チームメートが涙し、甲子園の土を集めている姿を、平井はベンチで座りながら見ていたという。「もうやりきったという思いしかなかったから。『暑いなぁ』ってベンチに座ってた(笑)。一つ勝つこともできた」
ただ1つ、高校3年の夏にやり残したことがあった。「今だから話せるけど、本当は甲子園に行けないと思って。県大会前は友達と『自転車で四国一周の旅行に行こう!』と話していて(笑)。新しい自転車を買って。だから、甲子園に行くことは“予定外”だった」。仲間との旅はお預けとなり、新品の自転車は自宅に眠ったままとなった。
普段は厳しい上甲監督が甲子園の時だけ見せる“上甲スマイル”は選手たちにとってどう映っていたのか。入学当初から学校のグランドには怒号が響き、上甲監督の恐ろしさは嫌というほど味わった。それでも聖地で見せる笑顔の裏には選手たちへの思いが詰まっていた。
「甲子園では嫌でも緊張する。だから、怒ったりして萎縮させるのが嫌だったと聞きました。でも、俺らからしたら逆に気持ち悪かった(笑)。だって、普段の姿を知ってるからね。今の時代じゃ絶対にアウトになることも色々あった。けど、やっぱりそれもいい思い出。高校野球を終えてから改めて上甲監督の元で野球ができてよかったと胸を張って言えますね」
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)