少年の勇気から始まったモンゴル野球 日本と横綱の支援で進む野球普及の道
着実に進む野球普及、白鵬も現役引退後の尽力を宣言
同時期に、日本相撲界で活躍する横綱白鵬も、母国の野球支援に立ち上がった。幼い頃より衛星放送で日本の大相撲を観戦していた白鵬は、野球の存在も気になっており興味を持ったという。
それまでモンゴルでは一般の野球チームは1つしか存在せず、少年野球も5チーム程度。しかし、白鵬は日本で味わった野球の魅力を母国モンゴルでも存分に味わってほしいと考え、2013年に日本側と共同で、ウランバートルのモンゴル国立野球場で野球教室を開催した。白鵬は実際に左打席に立ち、その大きな体に相応しいフルスイングから特大のホームランを放つなど、1球で仕留めるスター性はもちろん、野球の実力でも相当のものを見せた。また、野球教室のみならず、大量の野球道具をモンゴルに寄付している。
現在、白鵬はモンゴル野球協会会長を務めている。モンゴルでも、野球が日本のようメジャースポーツになることを願っており、相撲界引退後はモンゴルの国際大会参加、日本チームからの勝利を夢見て、モンゴル野球界に尽力することを高らかに宣言している。
2017年には、竹部貴博氏らが「モンゴル野球普及プロジェクト」と題し、大手クラウドファンディングサイト「Ready for」にて資金を調達し、現地で70名の子供たちへ道具を贈ったり、野球教室を開催するなど、支援活動が行われている。
また、2018年にモンゴル文化大使館に任命された河内志郎氏(三木資源会長)は、民間企業としての支援に加え、私財を投じて、野球大会の開催や指導者の派遣、寄付などの支援をし続けている。
1人の少年の勇気が数多くの日本人を動かし、着実に動き出しているモンゴル野球。白鵬関の引退後、これまでの支援を礎に、一気に動き出す可能性も予想される。広大な草原で白球を追いかけ野球を楽しむ少年が増えることを、これからも期待したい。
(大森雄貴 / Yuki Omori)