3大会連続MVPのエース里が快投 7回2死まで無安打も、快挙逃し「そういう人生」
最終回の7回2死まで無安打無得点も、あと1人のところで安打を許す
「第8回 WBSC 女子野球ワールドカップ」(米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表は28日(日本時間29日)、スーパーラウンド第1戦でアメリカに3-0で完封勝利を収め、決勝進出に王手をかけた。
最大のライバルと想定していたアメリカ撃破の立役者は、3大会連続MVP獲得を目指す里綾実投手(愛知ディオーネ)だ。14年大会の決勝でアメリカを7安打完封している里は、この日も7回2死までノーヒットノーランを続ける圧巻の投球。偉業達成まであと1人の場面で相手の4番に中前打を許して快挙達成とはならなかったものの、1安打完封で今大会2勝目を挙げた。
6回7安打1失点だった24日のカナダ戦で慎重になり過ぎた反省を生かした。この日は初回から緩いカーブを織り交ぜ、的を絞らせなかった。初回と3回に死球で走者を出した際には、次打者を併殺打で狙い通りに片付けた。6回2死まで打者17人で17アウト。6回に味方の失策で初めて得点圏に走者を背負った時も、崩れることなく後続を断った。三振は2個。「内野ゴロを多くして、守備からリズムをつくりたい」という狙い通りの88球だった。
里自身は、5回にアメリカの選手たちがベンチのフェンスを叩き、気を散らそうとしている様子を見て、無安打であることに気が付いたという。「でも、死球も出していたのであまり意識しませんでした」と言う。初安打を許した後は「火がつくと大変なので、しっかり抑えようと集中しました」と、より一層気持ちを引き締めた。最後の打者を打ち取ると、船越千紘捕手(平成国際大)と笑顔で抱き合った。
2大会連続でMVPを獲得している里だが、意外にもこれまでに無安打無得点の経験はない。「いつもうまくいかなくて、そういうピッチャー人生なのかなと思います。まだ未熟だと教えてもらいました」とさわやかに笑い飛ばした。女房役の船越は試合中、無安打無得点のことに「全く気付かなかった」という。それほど目の前の打者に集中していた。「里さんの調子がカナダ戦の時よりも良かったですし、里さんが投げ切れたことが一番です」と大一番で要求通りに投げ込んでくれたエースを称えた。
グラウンドだけではなく、グラウンドの外でも大黒柱だ。ミーティングでは、これまでの経験を踏まえて、気持ちの持ち方や考え方などを時には厳しい言葉を交えて若手に伝えている。ファンを大事にする姿勢も率先して見せている。差し入れをしてくれた人たちにお礼の寄せ書きをプレゼントしようと提案したのも里。この日の試合前に宿舎で用意し、試合後に一人ひとりに直接お礼を言いながら手渡していた。
強くて優しい日本のエースが自らの快投で、6連覇と自身3大会連続MVP獲得に大きく前進した。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)