“本塁打アーティスト”の魅力に迫る 西武・中村が持つ「本塁打を打てる感覚」
「60本は無理ですよ。でも、本塁打にはこだわっていきますよ」
本塁打を打つ感覚が戻ってきた。あれだけ苦しんでいたのが嘘のように、夏場を迎えて打ちまくっている。
「技術的ではなく、やっぱりコンディションですね。故障がほとんど完治したことで自分自身のプレーができるようになった。それによって当然、バットも強く振れるようになった」
連続試合本塁打が途切れた後も調子は落ちない。試合前練習では、別人のように強く、鋭いスイングを繰り返す姿があった。
天才的、芸術的な打撃技術も見ていてホレボレする。しかし、本塁打の魅力も捨てがたい。なぜなら遠くへ飛ばす、というのは、ひと握りの強打者にだけ与えられた特権でもあるからだ。
NPBでは長く、王貞治ソフトバンク会長が保持していた年間55本塁打が最多記録だった。そして13年、ウラディミール・バレンティン(ヤクルト)が60本塁打に記録更新した。2年連続40本塁打以上を記録した直後に、中村が言っていたことがある。
「55本って数字は見えてきた気がします。でも、60本って現実的に無理ですよ。ただ60は背番号と同じ数字で夢がある。そこを目指していきたいですね」
技術や用具の進歩もあるだろう。決して不可能な数字ではないように思える、あれから10年の時間を経て、最後に同じ質問をぶつけてみた。
「60本は無理ですよ。今でもその考えは変わらないですね。バレンティンで終わり。日本人にはとてつもない記録ですよ。でも、本塁打にはこだわっていきますよ」
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。