「とても楽しかった」―スリランカのひたむきさに見たアジア選手権開催の意義

好プレーを見せたスリランカU-18代表のハシャン・セニヴァイラスネ【写真:荒川祐史】
好プレーを見せたスリランカU-18代表のハシャン・セニヴァイラスネ【写真:荒川祐史】

「レベルが低いもの同士でやっていても、レベルは上がりません」

 スリランカ代表のマノジュ・フェルナンド監督は侍ジャパンU-18代表との試合後、こう語ってくれた。

「日本は世界ランク2位、スリランカは40位です。実力の差があるのは分かっています。5回で終わるものと思っていましたが、選手が頑張ってくれて6回まで戦うことができました。7回までいきたかったのでそこは残念ですが、良かったと思います。強いチームとやることが、強くなるための道なのです。フレンドシップと、そしてこういう環境の中で野球ができることに感謝をしています。レベルが高いところとゲームをやると、レベルを上げられる。レベルが低いもの同士でやっていても、レベルは上がりません。この大会はスリランカの野球の発展に大きく繋がると思います」

 この大会は、アジアの頂点を争う戦いである。ただ、その一方でアジア地域における野球の発展、振興にも大きな役割も果たしている。4日には、野球用具メーカーなどが作る「野球・ソフトボール活性化委員会」から、今大会を主催するアジア野球連盟(BFA)を通じて、スリランカとインドネシアにグラブなどの野球用具が贈られている。日本や韓国、チャイニーズ・タイペイのような野球“先進国”は、他国の見本、手本となり、プレーや姿勢を見せなければならない。それを直に見た野球“発展途上国”の選手は、その経験をもとに成長を遂げ、さらには、もっと下の世代へと経験と技術を伝えて自国の野球発展に繋げていく。その一歩として、この大会はあると言えるだろう。

 この日、中堅で好プレーを見せてくれたハシャン・セニヴァイラスネ。大敗を喫したにも関わらず、その顔は笑顔と充実感に満ち溢れていた。周囲から溢れる否定的な声とは真逆で、どこまでも楽しそうだった。彼も試合後にこう語ってくれた。

「日本とスリランカの野球には大きな違いがあります。日本にはこんなに綺麗な球場がたくさんありますけど、スリランカには1つの球場しかない。開会式が行われれば、あとの試合は全部その球場でやります。この大会に参加できたことはいい経験、歴史的な経験になったと思います。日本のようなチームとこういう国際試合を戦うと、点差はつきます。ですが、僕たちは最後の1球まで諦めることはありません。今日はとても楽しかったです」

 圧倒的な大差がついた試合結果は致し方のないところ。ただ、この結果以上に大事なものがグラウンド上にはあり、それをスリランカや香港、インドネシアといった出場チームの選手たちは今、経験し、体感している。決して、大会が無意味だと言うなかれ。アジアの野球振興、各国の友好など様々な意義の込められた大会を、侍ジャパンU-18代表は今戦っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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