圧巻防御率も勝ち星は伸びず…メッツ右腕デグロムはサイ・ヤング賞に輝くのか

2010年はわずかに1つ勝ち越したヘルナンデスが受賞

 思い出すのは、2010年のマリナーズ、フェリックス・ヘルナンデスである。防御率2.27と投球回249回2/3はア・リーグ1位。奪三振232はトップに1個足りないだけの2位だった。内容的には非の打ちどころがなかった。ところが、西地区最下位のマリナーズで投げていたため、勝敗は13勝12敗。たった1つ勝ち越しただけだった。

 同賞のライバルは、東地区で優勝したレイズのデービッド・プライスで19勝6敗、防御率2.72。そしてワイルドカードでプレーオフ進出をしたヤンキースのC.C.サバシアも同じく有力候補と目され、21勝7敗、防御率3.18だった。

 実は、筆者はこの年、ア・リーグのサイ・ヤング賞に投票することになっていたのだが、最後まで迷った。内容ならばヘルナンデスなのだが、伝統的な判断基準も気になる。すると、ヘルナンデスはいかにも勝ち星が少ない。デグロムも言っていたが、先発投手たちはまず間違いなく「自分の仕事はチームに勝利の機会をもたらすこと」と口にする。ならば勝利数は無視できないのではないか、と考えるのである。

 9月には内容重視でヘルナンデスに傾いていたのだが、さすがに勝ち越してもらわないと投票しづらいな、と思っていた。だから、最終登板となった9月28日に13勝目を挙げて白星が1つ先行して終わった時は「これで躊躇なくヘルナンデスに入れられる」と、ほっとしたものだった。

 投票の結果は、満票28のうちヘルナンデスが1位票21でトップ。次点のプライスが1位票4、続くサバシアは1位票3だった。もう少し接戦になるかと思ったが、意外と大差だった。やはり評価の基準が変わってきているのだろうと感じたものだ。ひと昔前だったらどうなっていたのだろうか? また、もしヘルナンデスが12勝12敗だったら、もう少し次点と接近したのだろうか? 

 そこで今季である。ナ・リーグのサイ・ヤング賞に投票することになっている記者は、頭を悩ませているのではないか。筆者は今季、投票者ではないので第三者として結果を楽しみにしようと思う。投票の締め切りは公式戦最終日である。

(樋口浩一 / Hirokazu Higuchi)

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