中日復活の鍵を握るビシエド&アルモンテ 「強竜打線」復活へ着実に歩む

アルモンテに影響を与えたイチローはじめヤンキースの日本人選手

 アルモンテは来日1年目だが、日本球界についての知識は多く、尊敬も深い。そこにはヤンキース時代の同僚、イチロー、黒田博樹、田中将大らの存在もあったという。

「彼らは日米で実績のある素晴らしい選手。同じ環境にいたので、注目していた。特にイチローは、同じ野手だから参考になることが多かった。とにかく日本人選手の準備の入念さには驚かされた。ここまで準備をしなければ結果にもつながらないんだ、と感心させられた。大きな影響を受けている」

 試合への準備に対する実直な姿勢は試合前練習から現れている。スイッチ打者のアルモンテは右打席で入念にスタンドティの球を打ち返す。1球ごとにメカニックを確認するように、打つ間隔は長い。右打席が終わると左打席も同様に行い、フリー打撃のケージへ向かう。

「左右両打席だから時間をかけないといけない。同日に左右両打席打たないといけない時もある。だからすべてに手を抜けないんだ。スイング時にはとにかく球に集中するだけ。しっかり集中してとらえることができれば、強い打球を打ち返せる。結果は自然についてくる」

 対戦投手に応じて練習内容を変えるのではなく、毎日、左右同じように準備を重ねる。そうすることで1試合を通じて左右両打席で高いパフォーマンスを発揮できる。

 今や不動の4番打者は、シャイで決して口数は多くない。しかしビシエドはチームを冷静に見て、自分の役割、チームの方向性を理解している。

「今、チームは強くなる途中にいる。若くていい選手も多いし、来日した時に比べてチーム自体が良くなっているのもわかる。もちろんCS進出のチャンスがあるのもわかっている。そう言った意味でもウイン、ウイン、ウイン。勝ち続けていくしかない。勝ち続けることで上位に行くことにもつながる。またそれだけでなくチームとして成熟していくことにも直結する。そういうチームの中で自分ができることをしっかりとやっていきたい」

 スペイン語が主で英語も完璧には話せないが、明るい性格で積極的にチームメイトと会話を交わすアルモンテ。ムードメーカーとして周囲を明るい雰囲気にしている。

「中日を選んだのはもちろんビジネスの部分もある。しかしグラウンドに出てしまえばそれは関係ない。ずっと一緒にいるチームメイトとともに勝ちたい。自分の調子も落ちてチームに迷惑をかけてしまった時期もある。とにかくチャンスで結果を残して勝利に貢献したい」

 前任監督の落合博満氏は「中日が弱くなったのは練習しなくなったから」とコメントしている。実際、チーム成績も落ちてしまったのだから、否定できない。しかしここにきて、中日伝統の練習熱心さも戻りつつもある。

 下降線をたどっていた時期が長い分、取り戻すのはタフな作業になる。しかし大きくジャンプするにはその分、低く沈み込まなければならない。かつての「強竜打線」が復活し、打って勝つエキサイティングな野球を見せてくれる日は近い。その中心にいる2人のドミニカンは、誰よりも強く勝利を欲している。今年、中日はダントツでリーグを制した広島に唯一、勝ち越した。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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