西武「熱男」山田が“師匠”の教えでプロ1号 「冷静に打席にも立てました」
ホームラン後には「熱男」のパフォーマンス
実は、今回のまっすぐ打ちは、入団当初から常々「憧れ」と山田が語るソフトバンク・松田宣浩のタイミングの取り方を模倣してのもの。「今年のオフに、自主トレで一緒に練習させてもらって、その時に聞かせてもらったのですが、松田さんはまっすぐを『1・2の3』で打ちに行くスタイルなんですけど、(ボールを叩くポイントを)前で弾きかえすというのを言われたので」。“師匠”の考えを実行に移し待望の一発を放った。
お立ち台では「不思議な感覚。感覚がないという感じ」と、打球の感触について答えていた山田。打った瞬間から、二塁ベース付近まで、ずっと打球方向を見ながらベースを回っている姿が印象的だった。「(スタンドに)入ったという実感が湧かなくて、ファンの人たちの反応で入ったのかなって確認できたくらいですね。」と、ファンの歓声で自身の初本塁打を認識し、三塁ベース付近でようやく笑みがこぼれた。
ファンも、そしてベンチも最高潮の盛り上がりを見せる中、飛び出したのが拳を突き上げる“あの”ポーズ。尊敬する松田の専売特許「熱男~!」のポーズだが、松田本人から「やっていいよ」と許諾済みとのこと。「みんなからもやれやれって言われたので」と、先輩方の要望もあってのパフォーマンスだった。
思えば昨年、1軍初昇格を果たしたものの、出場機会なくファームへ。今季も、6月15に1軍登録。翌日プロ初打席を記録したものの先発投手との入れ替えなどで計3度、ファームとの往復を味わっている。「チーム状況的にもしょうがないことだとは思うのですが、本当に悔しくて『活躍してやる!』っていう思いでやってきた」と、元気さの中に秘めた反骨心を持って、今回の大仕事を成し遂げた。それだけに「本当に今日の1本は嬉しいです」と、笑みを浮かべていた。
山田は辻監督とは同郷の佐賀県出身。指揮官は「いいところがないと、上では使わない」とした上で「今年に関しては、投手の谷間で(登録枠に)余裕があるときに上にあげて経験をさせてというのがあった。今回は中村が疲れていることもあるし。うまいことタイミングが合わさって(プロ初本塁打)。ま、嬉しいですね」と、最高の形で現れたことに、頬を緩めた。
今後の起用法については「サードのホットコーナーで、常に、よくも悪くも元気があるところ彼の魅力。これからもどんどんチャンスがあれば使っていきたいと思います」と、レギュラー陣の状況を見ながらではあるが、優勝を争う渦中においても、チャンスを与えることを示唆した辻監督。
「若い選手が出て経験を積んで結果を出して自信にしてくれればいいし、次世代を担う若い選手たちが、チームの力になるためには経験させるのが一番。山田のような若い選手が活躍すれば、チームに勢いがつくし明るくなるし、いいことづくめだね」と、再び頬を緩めた。
プロとして、確かな一歩を残した山田遥楓。しかし、あくまでこれは始まりにすぎない。「自分はまだ1軍の選手みたいに輝くことはできないのですが、少ない出番で、チャンスをもらえたらモノにできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」。初めてのお立ち台で、はっきりとした話し方で、自分の思いを伝えた若獅子は、今後のチャンスで何を見せてくれるのか。
(岩国誠 / Makoto Iwakuni)