誰からも愛されたホークス本多雄一 引退試合に溢れた人柄「みんなに支えられ」

2人の愛娘が花束をもって駆け寄り、“大好きなパパ”にメッセージを贈った【写真:藤浦一都】
2人の愛娘が花束をもって駆け寄り、“大好きなパパ”にメッセージを贈った【写真:藤浦一都】

セレモニー演出に「最後に子どもは卑怯だろ、と」

 引退セレモニーの冒頭は、この日のために作られたオリジナルのビジョン映像が流れた。数々の好プレーや節目の盗塁シーンに続き、王貞治会長をはじめとするメッセージが流れると、すでにファンの涙腺は崩壊寸前になっていたことだろう。

 あらゆる人への感謝を述べた挨拶を終えると、王会長、工藤公康監督、同期の松田宣浩から花束を受け取った。松田との場面を振り返り「13年間本当にありがとう、一緒にやってこれて良かったということを言ってもらいました。その言葉の中にすごい思いが詰まっているように感じました。なかなか泣かない松田選手が泣いていたことに自分も感動して、同期で入って本当に良かったなと思います」と感慨深げな表情を浮かべた。

 最後は2人の愛娘が花束をもって駆け寄り、“大好きなパパ”にメッセージを贈った。

「特別な思いがありました。最後に子どもは卑怯だろ、と。でも、娘がああやって振り絞って言葉をかけてくれた。娘なりに『パパすごい』と感じてくれたと思います」

 登録抹消中やリハビリで同じグラウンドに立てなかった仲間たちも、記者席やスーパーボックスから試合を見守っていた。それらの選手もユニホーム姿でセレモニーに参加し、本多と固い握手やハグを交わした。

「連絡もなく選手の方々が来てくれて、セレモニーが終わって初めて顔を目にして、本当に自分(本多)のことなのに、自分の時間を割いて見に来てくれる気持ちが本当にうれしいですし、顔を見るだけで感動します。ともに戦えたからこそ、そういう思いが出てきたと思います」

 場内一周をした後は仲間たちからの胴上げ。セカンドの守備位置付近で松田の音頭で外野方向を向いて10回宙に舞うと、最後は仲間たちとの記念写真に収まった。そこですべてが終了の予定だったが、報道カメラマンたちから胴上げが外野向きだったので表情が撮れていないと、思わぬ「もう1頂!」コールがかかった。これに最初に応えてくれたのも松田だった。ベンチ方向に先に帰りかけた本多を呼び戻し、ホームベース方向を向いてのアンコール胴上げが実現した。

「いい1日になりました。ありがとうございました」

 最後も報道陣に丁寧に感謝の言葉を告げた。

 誰からも愛された本多雄一。最後の1日を最高の形で締めくくれたのは、きっと野球の神様からも愛されていたからだろう。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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